最近の各国別の海外留学生数を見ると、中東諸国、特にサウジアラビアの伸びが際立っている。私がハーバードに留学していた2007年頃は、中国、インド、韓国からの留学生が圧倒的に目立っていた。留学という視点から見えてくる、アジアの「ライバル国」の勢いに対して、日本はこのままでだいじょうぶなのか焦りを感じたものだ。
一方、2012年(UNESCO)の各国の海外留学生数は以下の通り。
1 中国 694,365
2インド189,472
3韓国123,674
4ドイツ117,576
5サウジアラビア62,535
6フランス62,416
7アメリカ58,133
8マレーシア55,579
9ベトナム53,802
10イラン51,549
11トルコ51,487
12イタリア51,236
13ロシア51,171
14ナイジェリア49,531
15カナダ45,509
16モロッコ44,161
17カザフスタン43,039
18ベラルーシ40,643
19ウクライナ39,627
20パキスタン37,962
21インドネシア34,999
22日本33,751
中国、インド、韓国が上位であることに変動はないが、4位ドイツに次いでサウジアラビアが6万人強と5番目につけている。さらにはイラン、トルコ、モロッコなども4万人から5万人と、3万3千人で22番目の日本よりもずっと多い留学生を輩出している。
特にサウジアラビアは、「アブドラ国王奨学金」という海外へ留学する自国の優秀な学生に対する手厚い奨学金を大規模に展開している。これを受けて、留学生数は近年さらに急増しており、別のレポートによると現在12万5千人がフルスカラーシップを受給しているという。奨学金総額は実に17億ユーロ、約2300億円だ。この勢いが続けば、留学生数で韓国を抜き、インドに迫るのも遠くない。
先日は、「これからはイスラム人口が伸びる」という記事で、イスラム教人口は現在で世界の4人に1人、2050年には3人に1人になると書いたが、留学生数という切り口からもこの潮流ははっきりと見てとれる。
日本も「グローバル人材の育成」が叫ばれ、海外への留学生数を増やそうと取り組んでいるが、なかなか目に見える成果が出ない。一方、日本に受け入れる外国からの留学生は手厚い日本政府の奨学金もあってか、総数は13万人と比較的多いものの、中国と韓国に偏っている。もっとインドやブラジル、中東やアフリカからの留学生獲得に力を入れるべきだ。いま一度、インとアウトを含む留学戦略を見直し、人材育成に真剣に取り組まなければ、日本の将来が危うい。
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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。