反原発フリーライダーを駆除する方法

池田 信夫

西日本新聞によると、九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働の差し止めを求めた仮処分申請で、申立人23人のうち10人程度が申請を取り下げたという。


仮処分が認められた後で本訴で住民側が敗訴した場合、九電は仮処分の申立人に再稼働が遅れたことで被った損害を求めることができる。九電は審尋の準備書面で「再稼働が遅れれば、火力発電の燃料費などで1日5億5400万円の損害を被る」として、地裁に対し、申立人に賠償に備えた「妥当な金額」の担保金を積み立てておくよう命じることを求めたという。

1日5.5億円の損害が出ているとすると、本訴の判決までに1年かかったら損害は約2000億円。これを申立人23人で負担すると、1人100億円近い負担だ。脱落した人は「九電は何千億円損してもかまわないが、自分が損するのはいやだ」と思ったのだろう。裁判所が九電の申し立てを認めるかどうかはわからないが、認めたら残りの10人もおりるだろう。

原発を止めることによって今でも莫大な損害が発生しているのだから、誰かが負担しなければならない。法的に止める措置を取ってその損害を電力会社に押しつけるのは、フリーライダーである。

このように公共財の価値(この場合は差し止めの利益)を過大に申告して自分は費用を負担しないフリーライダーを防ぐ方法は、原理的にはわかっている。彼らに公共財の価値を正直に申告させればいいのだ。たとえば電波の価値を正直に申告させるには、美人投票するよりオークションで実際に金を取るのがいい。ソフトバンクがNTTドコモより電波を有効利用できるなら、高い価格で買うだろう。

今でも川内原発は適法に運転できるので、3年以上の運転停止が機会損失になっている。ざっと5000億円以上が電気代に転嫁されて利用者の負担になるが、これは薄く広く分散するので、フリーライダーが出てくる。彼らを駆除するために、電力会社は他の再稼動差し止め訴訟でも原告に担保を求めるべきだ。彼らが毎日5億円のコストを負担するのなら、何をしてもいい。