スカイマーク、想定通りの民事再生 --- 岡本 裕明

アゴラ

ある意味、こんなにわかりやすい倒産はない、と言ってもよいスカイマークの民事再生の発表でした。

私の昨年8月7日付ブログはスカイマークがエアバス社から巨額の損害賠償請求を受けそうだというニュースを受けて書いた記事なのですが、その一節にこうあります。


「選択肢は二つ。ひとつは潰すか、あるいは救済合併してもらうかであります。現実的にはエアバス社と延々とバトルするであろう損害賠償請求を考えれば誰も救済などしたくないでしょうから潰すか運営権と航空機を第三者に売却し、スカイマークそのものをもぬけの殻にして清算会社とするのがベストシナリオなのでしょうか?」

同社は社長の西久保慎一氏の運営する「西久保商店」と化していました。氏がもともと前職までに作り上げた個人資産を投入し、航空会社という私財投入型ビジネスとしてはやや大きすぎるものに手を出しました。私財投入型ですから銀行との接点が薄くなり、ショックアブゾーバーがなかったことが大きかったと思います。

事実、昨年の夏のエアバス発注キャンセル事件以降、手元の資金は減少を辿りました。その間、社内の資産を切り売りして食いつなぎながらJAL、全日空とコードシェアで搭乗率向上を図り、キャッシュフローを回す、という作戦に出るのです。JAL、全日空への提携話に当たり、出資の依頼もしたはずですが、両社からは体よく断られています。また、西久保社長はそれならば自社に出資したいファンドがある、と常々言い続けていましたが、それは本心で救ってくれるという気持ちだったのでしょうか?

私はJALも全日空もそしてファンドのインテグラルが今、キャッシュフローを含め、難局にある同社を荒波から救うより、一旦沈没させて救った方が二つの点でメリットがある、と考えた節があります。それはエアバス社からの損害賠償請求と訴訟をかわすこと、および西久保社長のクビであります。

JAL、全日空ともスカイマークの路線は喉から手が出るほど欲しいのは目に見えています。ところが国交省は第三極にこだわり続け、同社を独立路線として生かすことを考えていました。つまり、国交省の方針そのものがスカイマークにJAL、全日空から出資させないプレッシャーを与えていたことになります。国交省のかたくなな態度が同社の息の根を止めた、とも言えるのでしょう。意図したことと全く逆の事態になってしまいました。

西久保社長にしても民事再生のシナリオは相当前から描いていたと思われます。

ここまでほぼ完全にシナリオ通りであるとすれば次の注目点は同社を誰が持つのか、という事になります。

国交省の意地を見せるなら全日空に出資をさせるのは本意ではないでしょう。同社は既に経営難になった第三極になりそこなった航空会社を抱え込んでいます。一方、JALにはそれをさせないという頑なさも見て取れます。ファンドのインテグラルはつなぎですからとりあえず儲けたらさっさと手を引きたいと考えていると思います。このファンドが航空会社経営のリスクまで取るとは思えないのです。つまり、「本意の本命」が不在、という事になります。

もっとも、羽田線の利権を持っているという事ですから思わぬ会社が手を挙げる可能性はあります。考えてみれば同社はHISの澤田社長が起業した会社であります。西久保社長にバトンタッチし、HISの色は急速に薄まっていくのですが、旅行会社が航空会社という発想の転換があったわけですから運輸会社、ロジスティックス系の企業が手を挙げてもおかしくないし、それこそ、鉄道会社がライバルを抑えるという意味で出資する発想もあるでしょう。

もう一つ考えなくていけないのはJAL, 全日空による圧力は相当なものである、という点です。両社は第三極に対して露な苛めを平気でやり抜くという事です。陰湿とも言えます。それこそ、そういう時は孫正義氏の様な第三極型経営者が責めないといわゆる東証一部上場の優等生ではあの体育会系のいじめにはついていけないかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。