世界最大の飲食チェーンであるマクドナルドのイメージが世界規模でガラガラと大きな音を立てながら崩れていくことを数年前、誰が想像したでしょうか?日本では異物混入の問題が主体となっていますが、ロシアでは欧米からの経済制裁の報復で衛生問題に理由をつけてビジネスにダメージを与えました。本家アメリカではメキシカンファーストフードのチポトレに代表されるように新興のチェーンにオセロをひっくり返されつつあります。
私は以前、このブログでこの傾向はマクドナルドだけの問題ではなく、巨大チェーン共通の問題となる可能性を秘めている、と指摘しました。そしてスターバックスでも10年後には一介のコーヒーチェーンになり下がることもありうるとしました。理由は巨大チェーンになるとその植え付けられたイメージが時代の変化に対して簡単に動かせないからであります。
コーヒーの世界では明らかにサードウェーブが大きく浸食してきています。こだわりの豆、バリスタの技量を問い、ハンドドリップがエスプレッソの流行をひっくり返すのは案外数年の問題かもしれません。その時、スターバックスでコーヒーを作る人たちがバリスタとして転じられるかどうか、これは大いに疑問があるかもしれません。なぜなら会社から与えられた豆をオートグラインダーとオートのスチーマー使い提供するそのコーヒーは何十種類もの中から客が注文のコーヒーに仕上げる技量に特化しているからであります。
日経ビジネスが、若者の好みが非常に分散化してきているとして大きな特集を組みました。
チェーンの特徴とは大衆に一つの流れを作り出し、それをトレンドに変え、ビジネスを急速に発展させることであります。そしてチェーン店と無名の店があった場合、人々はより保守的にチェーン店の確実性を求める、という習性にしたがって成長させてきたわけです。
ところがマクドナルドのようにあるきっかけでその確実性が揺らぐとその顧客のオプションは無限に広がってしまうという弱点があります。まさにこれが日本の外食産業が抱える悩みであります。つまりマクドナルドの不振は本来ならだれか別の同業のハンバーガーチェーン店がその補完的便益を受けるはずです。ところがどの外食もその恩恵に預かっていないどころか更なる代替であるスーパーやコンビニも売り上げは伸びていないのです。この答はいまだに明白に統計的に表れてきていません。個人的には弁当に代替された部分があると思っていますが。
先日、カナダの某有名チェーンレストランでパスタを注文したのですがパスタ好きの私が半分残したその理由は余りにも中途半端な味だったということでしょう。欧米の人はパスタはかなり柔らかく茹で上げます。アルデンテは日本人の特権ですが、私も柔らかいパスタは絶対に無理です。ソースも万人好みとなればなぜ、この店で2000円もするパスタを注文しなくてはいけないか、と当然疑問が生じてしまうのです。
つまり、チェーン店は最大公約数を求めるビジネス、それに対して人々はクオリティオブライフがより上質になればなるほどこだわりを求めるのであります。それゆえチェーン店は文明度が高い国ほどこれからは流行りにくくなるというのが私の見方です。
特に食については誰でも必ず日に2-3食は食べるわけでそのこだわりや個人の期待度はほかのもの、例えば家電や住宅に比べはるかに高いのです。例えば皆さんが今着ているそのシャツやパンツ、ジャケットと全く同じ柄、色のものが街に溢れていたらどうしますか?絶対に着ないはずです。ユニクロが国内でブームになった時、アンチユニクロ派はまさにこの点を突いたのです。だからこそ、ユニクロでもベーシック、アンダーウェアとしての活性化にその源流を見ることができるのです。
マクドナルドの不振は異物混入が引き金になりましたがそれは時代の流れであると言えます。外食産業はこれから相当大きな舵を切ることになるでしょう。繁華街の居酒屋は店の名前は違えど中身は皆同じであること自体がおかしいとなぜ気が付かないのか、私には不思議であります。一つ言えることは飲食店経営者はやけに多店舗展開を好むということは申し添えておきましょう。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 2月16日付より