イスラム国によるテロリズムの本質とは

アゴラ編集部

暴力や暴力を背景にした威嚇により、自分や集団の主義主張を訴えることを「テロリズム(terrorism)」といいます。人類の歴史で、こうした行為は有史以降、枚挙に暇がないほど行われてきました。ただ、これをテロリズムと呼称したのは、フランス革命で急進派が反革命派を約1万6000人殺害した「九月虐殺」からのようです。


テロリズムの語源はフランス語の「terrorisme」で、ラテン語の「恐怖」からきています。フランス革命時の「恐怖政治(La Terreur)」も同じ。ようするに、テロの本質は恐怖というわけです。また、テロには「赤・白・黒」というような修飾がつくことがある。赤色テロは共産主義、白色テロは反革命や体制側、黒色テロはアナーキストによるものだそうです。

テロリズムがロマンティックに語られていたのは遠い昔のことでしょう。帝政ロシアの皇帝に爆弾を投げつけたナロードニキもテロリストですし、幕末の勤王浪士も新撰組も言ってしまえばテロリスト。もちろん安重根もテロリスト。暴力や暴力を背景にした圧力で主義主張を押しつける連中は、すべてテロリストです。

21世紀は「テロとの戦い」の時代とも言われています。我々が対峙するテロリズムは多種多様なものがありますが、今の脅威は主にイスラム過激派によるものです。では、連中が蔓延させたがっている恐怖とはいったいなんでしょうか。いわゆる「イスラム国(IS)」は、欧米や日本の人質を残忍な手法で殺害し、その様子をインターネットなどを通じて世界中へバラ撒いています。

一説によると、こうした「処刑」はイスラム国が追い詰められるたびにその過激度を増しているそうです。テロリズムの恐怖をバラ撒くことで、欧米や支配地域への圧力に利用し、欧米内のルサンチマンや不満分子のイスラム教徒をリクルートするためにやっている面があるらしい。人質と身代金などの交換交渉も単なる方便であり、人質を殺害することでイスラム国の恐怖をアピールするためだけにやっている可能性があります。

捕虜になっていた空軍パイロットが斬殺されたことを受け、ヨルダンはイスラム国へ激しい空爆を敢行し続けています。米軍主導の有志連合もシリアとイラクに広がるイスラム国の拠点を攻撃。また2月15日には、イスラム国が北アフリカのリビアでエジプト人のキリスト教徒21人を殺害する映像を公表し、自分たちの恐怖をアピールしました。これに対し、エジプト軍はリビア内のイスラム国を空爆して報復。まさにイスラム国との戦いは、イスラム圏内でのイスラム教徒同士の戦いになっています。

赤にせよ白にせよ黒にせよ、いかにその主義主張が正当なものであってもテロリズムは不毛です。有志連合による空爆も一種のテロだとするなら、テロはテロの連鎖しか生みません。しかし「話せばわかる」という言葉も暴力の前では空虚に響く。一方、イスラム国が醸成させたがっている恐怖も、インターネットというブラックホールに「消費」され、次第に効果が減退し始めているようです。

VICE
Islamic State Threatens to ‘Conquer Rome’ in Gruesome Video That Shows 21 Beheadings


Cybercriminal gang plunders up to $1 billion from banks over two years
IT WORLD
サイバー犯罪が、この2年間で世界の25カ国の銀行から少なくとも1200億円ほどを不正に強奪している、という記事です。銀行内のセキュリティへ侵入するためのマルウエアをフィッシングメールなどで送り込む、という手法がもっぱら。また、送金額を膨らませる、という方法もよくとられるらしい。この約1200億円の中で12億円ほどは、一度のハッキングで盗まれたそうです。

Magna Carta edition found in Sandwich archive scrapbook
BBC NEWS
イングランド南東部ケント州にあるサンドウィッチは、軽食のサンドウィッチを考案したといわれていることで有名なジョン・モンタギュー伯爵の所領として有名です。この記事では、そのサンドウィッチのアーカイブからマグナ・カルタ(the Great Charter of the Liberties of England)の複製が見つかった、と書いている。マグナ・カルタは1215年6月15日にイングランドの「失地王」として有名なジョン(John、1167年~1216年)王によって制定された大憲章。国王が軍役や課税をめぐり貴族や聖職者の権利を認めたという内容です。この複製、水に浸食されて断片になり、王の印章も失われているらしい。ただ、発行年月日がマグナ・カルタ制定時のものと同じ。価値は約183億円になるそうですが、観光用の史料として売り出しはしないそうです。ちなみに、モンタギュー伯爵がサンドウィッチの名付け親というのはどうも眉唾のようです。
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マグナ・カルタを制定したジョン王。マグナ・カルタは成立後2カ月で廃棄され、貴族らの反乱につながった。その後、ジョン王は赤痢で他界。貴族らはマグナ・カルタを担いで息子のヘンリー三世を世襲させるが、王と貴族の利権を巡る対立は長く続いた。

Privacy challenges
EurekAlert!
米国の科学雑誌『SCIENCE』に掲載された個人情報の漏洩に関する研究を紹介している記事です。クレジットカードの情報が110万人分3カ月ほどあれば、個人情報の90%を識別することが可能だそうです。これはクレジットカードを使った日時と場所の情報を含むSNSや写真などの手がかりが3つか4つあればできてしまう。つまり、道に落ちていた3枚のレシートがあれば、そのカードの所有者を特定できてしまいます。または、レシート1枚にFacebookか何かの個人的な写真やTwitterのつぶやきがヒントになる。燃えるゴミの日にレシートを安易に出せない時代になった、というわけです。

Egypt’s Morsi on trial accused of leaking secrets to Qatar
the guardian
2013年のいわゆる「アラブの春」でエジプトの大統領になったものの、その後の「軍事クーデター」で解任され、現在、拘束中のムハンマド・ムルシー氏についての記事です。エジプトの司法は、同氏に対し、カタールに安全保障上の秘密を漏洩した、と批難しているらしい。19世紀から反欧米の運動を続けているムスリム同胞団についての情報をカタール政府へ知らせた、という内容。エジプト発祥の、ムスリム同胞団は、アルカイダやハマス、いわゆるIS(イスラム国)など、今のほとんどのイスラムテロ組織のルーツです。


アゴラ編集部:石田 雅彦