「預金封鎖」と「金利上昇リスク」の報道から見えてきたこと --- 内藤 忍

アゴラ

最近、日本の財政に関して気になる報道が2つありました。1つはNHKの「預金封鎖」に関する番組、そしてもう1つは、黒田日銀総裁の発言が議事録から削除されていたとする日経新聞の報道です。


図は、NHKの番組の中で使われていたもののようですが、GDP比で見た財政赤字の水準が戦後の最悪期に酷似していることを示しています。

日本で預金封鎖が発表されたのは、敗戦直後の1946年2月16日です。導入の目的は、預金の引き出しを厳しく制限することで、急激なインフレを抑えるためと説明していたようですが、事実は別のところにあったようです。

当時の渋沢大臣の証言記録には、預金封鎖の目的が「財産税徴収の必要から来た。まったく財産税を課税する必要からだった」と書かれているそうです。戦時中に膨らんだ借金を国民負担によって返済するという目的です。返済原資として、国民が持つ預貯金だけではなく、田畑、山林、宅地、家屋、株式などの資産に、25%から最高90%の財産税(対象10万円超)を課税したのです。

もう1つの気になる報道とは、日本の財政に関する2月12日の経済財政諮問会議での黒田日銀総裁発言に関するものです。「黒田氏は珍しく自ら発言を求め、財政の信認が揺らげば将来的に金利急騰リスクがあると首相に直言した」(関係者)にも関わらず、議事録からその発言が削除されていたというのです。

財政再建に対する政府と日銀のスタンスの違いが浮き彫りになっています。政府の財政規律に対する甘い考え方に黒田総裁が苛立っているように見えます。

このような報道は、2つのことを示唆しています。

1つは、日本の財政問題について、危機意識を持つ人たちの数が増えてきたということです。財政赤字の問題は以前から指摘されてきましたが、日本国民が国債の90%以上を保有している状態であれば問題ないとされてきました。しかし、本当にそうなのか?将来は誰にも予想できなくなってきました。

そしてもう1つは、日銀の金融政策の出口が見えなくなってきていると感じている人が増えているということです。バランスシート上に増えている国債をどうやって最終的に処理できるのか。財政の規律が甘くなればなるほど、日銀は窮地に追い込まれる可能性が高くなります。

資産運用に関して、私がいつも思い出すのはこの格言です。

「賢人は最善を望みながら、最悪を覚悟する」

どちらのニュースも元のソースを確認した訳ではなく、真実がどこにあるかははっきりしませんが、個人投資家がやるべきことは、はっきりしています。将来のシナリオを自分で考え、最悪の事態に対応できる体制を今から作っておくことです。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年2月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。