シャープは本当に復活できるのか?

岡本 裕明

「シャープが主力二行へ資本支援要請」のニュースは同社がそこまで傷んでいたのかという驚きとやっぱりこの道となったのかという納得が同時に入り込んでくる奇妙な印象を持ちました。

同社の3月期の連結決算見込みが300億円の赤字から1000億円水準まで悪化することに伴い、主力銀行に借入金のデットエクイティスワップ(債務の資本化)を検討してもらっているようです。その規模、約1500億円と言われています。自己資本比率が現在10%でありますが、リストラ費用がかさむ今期のみならず、なぜか来期(16年3月期)も赤字見込みとされており、債務超過のリスクも取りざたされていることから債務の資本化という手法を選んだのでありましょう。


私が以前勤めていた会社では「債務の資本化」は経営困難になった子会社の救済策としてかなり普通のスキームとして取り扱っていました。(自転車操業の企業においてあらゆる金融手法を入社数年目の社員でも理解し、銀行説明させられた経験は今でも生きています。)数ある企業救済策の中で「債務の資本化」は銀行が比較的嫌がる仕組みでありました。なぜならば銀行がその企業に対して長期的にコミットをすることになり、いわゆる護送船団方式と変わらず銀行融資の公正さの説明が時として難しいというものでありました。

同社をこの数年、かなり興味深く観察し、それでも飽き足らず、一時は株まで取得してこの会社の「性格」を見てきたのですが、「シャープ癖」が抜けなかったというのが私の下した結論であります。

企業にはどんな大きなところも小さなところもそれなりの「性格」が備わっています。DNAとも称しますが、それこそ日本中、世界中の会社にはそれぞれの企業DNAが備わっています。ビジネスするにあたり付き合いやすい会社、しにくい会社というのはありますが、それは正に企業の個性との相性であります。一般には安定収入がある様な企業体質はおっとりとしています。一方、流行や敏感な世の中の流れの中で生きている会社はtime is money というより timing is money であって、チャンスを狙い、虎視眈々とその準備をしているイメージが強く、その代表的な存在が電機やIT関連でありましょうか?シャープももちろんその一つであります。

シャープにはもう一つ特徴的な「性格」があります。それは比較的ハイリスクハイリターンをとる傾向が強いのであります。それが一発屋的な結果を生んだケースもあるでしょう。かつて同社のイメージした「一本足打法」はすべての経営資源をそこに集中し、一発逆転を狙うというスタンスで今でもそれがありありと取って見えるわけです。うまくいっている間は絶好調になりますが、一つ間違えばガラガラと音を立てて崩れてしまいます。

例えば一昨年はうまくいった中国向けスマホ向け小型パネル。これでシャープ復活か、とまで思わせたのもつかの間、ジャパンディスプレイの攻勢にあい、あえなく撃沈されました。今期の赤字の主たる原因となる太陽光パネルビジネスの減損も一時期は世界でトップクラスまでシェアを伸ばしたもののそれは正に瞬間だけで企業として最も大事な「継続性」が全くなかったことが実に悔やまれます。

思うに同社の技術陣は非常に優秀なのだろうと思います。ただ、その技術を水平展開して圧倒的なモノにできない気がします。私が常々言っている日本企業のマーケティング力の欠如そのものであります。

では、長期的経営のビジョンが読みにくい同社に対して銀行は本気で債務の資本化を検討するのか、でありますが、私は流行の分社化をさせてみたらよいのではないかと思います。以前から思っていたのですが、この会社はソニーのDNAに近いものがあります。そのソニーの分社化が進んでいる中でシャープの事業エレメント考えた場合、液晶、電子部品、白物家電と非常に明白に分けやすい状態になっています。ならば責任の所在を明白にし、緊急時の切り離しがしやすい分社化は意に適うと思います。

今後、主力銀行がどういう結論を出すか、支援とした場合にどのような条件を出すのか、それが同社の道を決めることになりそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ外から見る日本 見られる日本人 3月3日付より