解雇条件で争える大企業正社員という特権階級

松本 孝行

城さんのつぶやきがなかなか衝撃的でした。ただ、どうもこの赤旗の内容を見るとどうも解雇そのものを認めていないような気がします。



赤旗の内容は日本IBMが解雇をするときの会話について記載しています。内容を見ていると、業績不振によって部下の人に会社都合の解雇になるか、それとも自己都合退職にするかどっちがいいか?ということを迫っています。言葉遣いも特に厳しいものではなく、脅し・恐喝などは一切ありません。それどころか退職金を割増して支払うということ、そして新しい職場の斡旋も協力してくれるということでした。

なんという好条件なのでしょうか、フリーランスで仕事をしている人間としては喉から手が出るくらいの好条件での解雇です。退職金なんてそもそもフリーランスにはありませんし、次の仕事を紹介してくれるなんてこともありません。別にこれは私のような自営業だけでなく、中小企業で働く正社員も同じです。退職金はないし当然上乗せもありません。そして次の仕事はハローワークで勝手に探せと言う対応です。

そして非正規社員には退職金などはありません。派遣社員であれば、次の派遣先を会社が見つけてきてくれる可能性もありますが、契約社員やパート・アルバイトにはそんなことをはしてくれません。非正規社員と中小企業の正社員、自営業の人たちを合計すれば労働者の多数派になります。その多数派の労働者から見れば、このような条件は破格の条件でしかなく、自分たちとは縁遠いものです。

あまりにも好条件なので赤旗としては「日本IBMはこんなにいい会社なんですよ!」と言いたいのかなぁとも思いますが、おそらくこの対応に対して問題があると問題提起しているのでしょう。私にしてみればどこに問題があるのかさっぱりわかりませんが、どうも退職強要という言葉を使っている当たり、「会社側から退職を促すようなことは絶対ダメ!」と主張しているのではないかと思います。

つまり解雇そのものを認めないと言っているのだと理解できるような内容になっていないでしょうか。解雇規制の緩和問題であるとかホワイトカラーエグゼンプションであるとか、いろいろな雇用に関する話題がありますが、まずは解雇を認めるか認めないかということをはっきりとさせたほうがいいのではないでしょうか。まぁ少なくとも企業に解雇権を認めない国というのがあるとは思えないですけれども。

今のところブロゴスに乗っている赤旗の記事を見ても、これのどこが問題だということは書かれていませんので、「解雇を認めないと言っているのではないか?」というのは私の推測でしかありません。しかし仮に赤旗やその他のリベラルな方々が企業の解雇権を認めるのであれば、後はこのような補償をすれば解雇を認めるかどうかの問題になるかと思います。私は金銭解雇支持なので、このIBMの解雇のやり方は優しすぎるくらいだと思います。

しかし赤旗や労働組合などはこのような金銭解雇を認めたくないのではないか?と思います。金銭解雇なら認める、という話も聞いたことがありません。であれば、どういった解雇なら認めるのでしょうか。解雇は認める、けれども今回のIBMのやり方はダメというなら、どこがダメでどういう状況ならいいのかということを語るべきでしょう。でなければただ単に難癖をつけているだけにしか見えなくなってしまい、労働者にとっても企業にとってもマイナスにしかならないのではないかと思います。

とはいえこの話題を見ても現実的に思えない自分がいます。まるで自分の状況から遠く離れた話題のように見えてしまいます。果たして何人の人がこのような厚遇された条件を解雇の時に提示されるのでしょうか。一部の特権階級の話しをしているのか?とも思ってしまいます。自営業やパート・アルバイトを含む一般の多数派の労働者はこんな待遇は受けられないんですから。竹中さんが「正社員は優遇されすぎ」と主張するのも仕方ないんじゃないですかねぇ…