毎月実施されているJNN世論調査の一項目、「“アベノミクス”の評価は?」を直近3ヶ月の推移で見てみますと、「評価する」が44%→41%→40%、「評価しない」が45%→49%→50%と、その評価は若干厳しくなってきています。
私自身は此のアベノミクスは、日本経済をデフレから脱却(まだ完全脱却とまでは行かないにしても)せしめるという点では一定の成果が上がったというふうに言えるものと、評価して良いのではないかと思っています。
例えば、元経産次官の北畑隆生氏なども「第1の矢と第2の矢は、鮮やかに円安と企業収益の改善をもたらし、デフレ脱却もほぼ実現した」と評しているようですが、デフレ(…消費者物価などの一般物価が持続的に下落を続ける現象)からの完全なる脱却を早期に実現すべく、今後も日本経済の最優先課題として取り組んで行かねばなりません。
そして消費・設備投資等の回復が見られること、取り分け「日本の企業数の99%以上、就業者の約7割を占める」中小企業の生産・業績・設備投資といったものが回復して行くことや、地方経済にまで経済回復の恩恵が齎されることが望まれます。
昨年11月、安倍首相は「平成29年4月には確実に10%へ消費税を引き上げるということ」を約束して突然の解散総選挙で以て消費再増税延期という難事を成し遂げ、先日も「10%までは消費税を引き上げていくが、それ以上の消費税の引き上げで税収を増やすことは考えていない」と衆院財務金融委員会で述べたようですが、私はその時の経済状況次第では「確実に10%へ」引き上げなくても良いとさえ思っています。
日本経済の景況感は「雇用環境の改善や、株価上昇による資産効果に加え、訪日外国人旅行客による好調なインバウンド需要」等の複合的要因で消費増税実施以降に悪化した水準より改善の兆しを示しており、また例えば「輸出物価を輸入物価で割った交易条件は(中略)過去4カ月間について見れば、リーマンショック時の特殊な時期を除くと1991年以来の急速な改善ペースを示してい」ます。
但し、日銀のアセットが膨んでいるだけの状況が続く中で日本経済が良くなるというようなことは何時までも続かないとは以前にも指摘した通りであって、アベノミクスを成就すべく第三の矢すなわち構造改革を通じた成長戦略が完遂出来ねば、近い将来異次元緩和の後遺症ばかりが出てきて日本経済は大変な副作用に悩まされることになるでしょう。
現況を見るに、残念ながら第三の矢は未だ以て殆ど何もスタートしていないと言えなくもないような状況ですが、此の三本目がこのまま足踏みし続けるようであれば、時間の問題で日本経済は本当に可笑しくなるのではないかと心配しています。
更には構造的問題を一つ例に挙げて端的に述べるならば、日本の社会保障制度の根幹を全体的に揺さぶってくる人口減少・少子高齢化はどんどん進行しており、一刻も早く当該制度に手を付けて抜本的に見直して行かねば将来確実に大変な問題になるでしょう。
之に関してあるエコノミストは、「現在の少子高齢化を放置すると、2060年には人口が9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になると推計されている。そうなれば内需が大きく縮小するばかりか、相当数の地方自治体が財政破綻の懸念に直面するだろう」との指摘を行っています。
『年頭所感』(15年1月5日)にも書いたように、安倍首相には歴代政権が為し得なかった歳出改革の本命である社会保障改革(、即ち医療費と介護費の伸びに歯止めを掛ける改革)を通じた財政の健全化にも、様々な施策を徹底して講じる中で一層取り組みを強化して頂きたいと思う次第です。
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