AIIB不参加を評する

北尾 吉孝

連日報じられているように、本日アジアインフラ投資銀行(AIIB:Asian Infrastructure Investment Bank)の創設メンバーとしての期限を迎え、日本は参加見送りの方針を明らかにしました。


これまで此の3月末という期限に向け、「英国以下の欧州主要国が雪崩を打って参加を表明したほか、G7の一員のカナダをはじめ、韓国やオーストラリアも参加を表明」し、既に40カ国超が参加申請を行っていました。

私としては、安倍首相が「焦って入る必要はない。中国のガバナンスを確かめてから考える」と述べられていたとの報道の通り、今回の政府の対応で良かったのではないかと思っています。

AIIB参加の条件として日本政府は、「1)公平なガバナンスが確保されているか。特に加盟国を代表する理事会がきちんと審査・個別案件の承認をすること、2)債務の持続可能性や環境社会に対する影響への配慮がきちんと行われること」を考えているようです。

私はAIIB等の国際金融機関が設立されること自体には反対でもありませんし、アジアの為になるならば大いにやったら良いとは思いますが、同時に運営体制における十分な審査機能やチェック機能とりわけ意思決定に際しての透明性・公平性・妥当性の担保は、極めて重要な問題であります。

AIIBは中国主導の構想で余り透明性があるとは中々思えず「圧倒的な力を持つ中国がその立場を利用し、もっぱら自国の利益を追求することがないかが懸念され」ているわけで、やはり日本の拠出金が無駄に使われたならば大変なことになりますから、高い水準のガバナンスの有無をきちっと検証した後に、参加態度を明らかにすべき話だと思います。

また、米日が主導するアジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)との在り方にあって、先週水曜日ADBの中尾武彦総裁は「ADBがAIIBに敵対するというオプションはあり得ない」と言われ、「条件が合えば協調融資を検討する考えを明らかにする一方、ADBの環境や人権に配慮した融資基準については引き下げない方針」を示されました。

総裁の言葉を借りて言うならば、日本としては先ず第一に1966年の設立より「歴史のなかで築いてきた信頼と条件」を有するADBがある以上、AIIBにお金を出すというのでなく寧ろ必要に応じてADBにそれを入れたら良いと思います。

毎日新聞の記事で昨日、「アジアでは2020年まで年7000億ドル(約84兆円)超のインフラ需要があるとされるが、ADBが融資や無償資金支援などに使えるのは年130億ドル前後。それでも、世銀やADBを大幅に強化しようとする機運は高まらない」との指摘もありましたが、仮にそうであるならば初代より歴代総裁を輩出してきた日本がその体制強化にイニシアチブを発揮すべき時でありましょう。

勿論、米日主導・中国主導という中で何らかの違いを際立たせADB・AIIB共に存立して行くのも良いですし、場合によっては提携ということも将来あって良いでしょうが、何れにしても期限を切られ慌てふためいて不透明な組織への参加決定を行うべきではありません。

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