資本のチカラ

岡本 裕明

金融の量的緩和で潤った分野の一つに新規上場を押し上げたことと資本のチカラによる企業買収でしょうか?銀行は十分なお金を持っていても景気が優れず、雨が降っているので貸し渋りが顕在化していました。ところが、その雨は2013年頃に止み、空も少しずづ明るさを見せてきました。


晴れの時に傘を差しだした時、その傘、貸してくれ、というのは成長路線に乗っかっていていくらでも資金が欲しい新興系の企業とここでライバルを落とし込み、一気にシェア奪取と考えている攻めの姿勢をする企業でありましょうか?

ドラッグストアのツルハホールディングスがレディ薬局を買収し、マツキヨを抜き、業界トップのウェルシアホールディングスに肉薄すると報道されています。ツルハは1929年に北海道旭川で産声を上げた薬局ですが、拡大路線はホールディングスとして東証一部上場となった2007年ごろから急変します。それまでも買収路線であったのですが、それを一気に強化し買収に次ぐ買収で業容を拡大し、業界の中で頭角を現してきたのです。今回の四国を中心としたレディ薬局の買収もその一環でしょう。正に肉食系の代表的企業ともいえるのではないでしょうか?

先日発表のあったファミマによるサンクス/サークルKとの経営統合。これも飽和した国内のコンビニで脱落者を出さずに資本のチカラで救いの手を出すことでウィンウィンの状況を作り出しているともいえます。ある意味、脱落しそうな企業には競合相手が「寄ってたかって手を差し伸べる」という事でしょう。それ故最近、大型倒産が聞こえなくなったのは単に景気が回復局面にあるという事ではなく、弱肉強食で生きているうちに食べてしまうスタイルに変わったともいえそうです。唯一違ったのがスカイマークですが、あれはエアバス社との一件がなければ状況は全然違っていたはずです。

一方の新興系企業の活躍も目覚ましいものがあります。13日日経の夕刊トップは「新規上場 世界で復調 14年度、3年ぶり1000社超 中国3倍 日本も6割増」とあります。新規上場は2010年に1500社程度まで増えた後、12年には800社水準まで下落、その後、復調となっているというのが大まかな流れであります。日本に於いては13年の53社から14年度には86社となっており、本年度も4月末までのIPOが40社あり、今後もかんぽ、ゆうちょ、LINEといった大型上場が予定されています。

これらのIPOを支える資金はやはり、投資先を虎視眈々と狙っている溢れるマネーが作り出す絵図でありましょうか。これらが言えることは既存の企業も次々と現れる敵にいつやられるかわからない戦国時代であるともいえます。その裏にはかつての戦争は企業間の営業力、商品開発力でしたが、今やマネーという新たなツールが加わったことで時間を稼ぎ、一気にのし上がるスタイルがごく普通になったともいえます。

これは新たな意味での企業淘汰であり、経営の効率化とダメ企業の退場を促すため、資本主義経済としてはワークします。ただ、例えば昨年秋に東証一部上場のゲーム開発会社GUMIは2015年4月期の決算予想を上場後に大幅な下方修正したことから大きな批判が出ています。上場する際の黒字見込みから上場直後に赤字とするのは投資家の信任を明らかに失ってしまいます。更に同社の財務担当役員が株価暴落の過程で持ち株を売り抜けていたというモラル上の問題も発生しています。

今後は投資家、金融機関のマネーが正しく、そして本当の意味での資本効率を高め、日本企業を成長させるものになっていくのか問われそうです。前述のGUMIの場合、引受幹事の野村の姿勢に改めて疑問が出たのは言うまでもありません。

溢れるマネーは有効に使ってこそ、本当の価値があると言えそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 4月14日付より