第100回薬剤師国家試験結果が発表された。
合格率は事前予測より若干高かった。薬剤師国家試験の合格基準は絶対評価である。よって、問題水準が同じであるなら、受験生の学力は少し高くなったということになる。
しかし、カラクリがある。「正解率低すぎて採点対象としない、全員正解とみなして加点する」補正問題が、345問中、11問もあるからだ。
以下の問題は、下位25%の受験生が全員正答できなかったので、全員が正答として点数が与えられている。
問題を見て驚いた。
6年も大学に通った学生に解かせる問題ではない。
以下の問題は、高校化学を履修していれば30秒で解ける。
6年制薬学部卒業生の下位25%は高校化学すらできないのだ。
問2と問9は高校化学である。問4は製造管理における単なる暗記事項である。問20は一般常識問題である。問60はCOPDの定義さえ知っていればわかる。問108は化学系学生なら、専門教育1年目で解ける。問181は専門学校卒の看護師でも知っている知識である。
つまり、下位25%の受験生たちは、薬剤師専門教育以前のところで躓いているのだ。こんな人たちを卒業させている薬科大学は、大学教育をしているとは到底言えないし、上げ底で合格させてもらっている薬剤師たちは、薬の専門家どころか理系大卒水準にすら達していない。
薬剤師の知識レベルは国家試験合格時が最も高く、年数が経過すると、どんどん低下していくので、世間の薬剤師の水準はさらに低い。
薬剤師たちが主張する、薬剤師が医師の処方ミスを訂正しているとか、一般薬販売時に、簡易的な診断機能を果たしているという話は、能力的に非常に困難である。「医師の処方を監査したら、こういうミスを拾った」「一般薬販売で、危うく危険なケースを見つけた」という話は、偶然の産物だと思う。
井上晃宏(医師、薬剤師)