作家の橘玲さんは、マネックス創業時以来の古くからの友人ですが、一読者としてもかなり多くの著書を読ませてもらっています。その中でも、「臆病者のための億万長者入門」は、投資初心者の入門書として、とても読みやすいおススメの一冊です。
この本の172ページにも「マイホームと賃貸、どっちが得か」という資産運用業界の「哲学的命題」が出てきます。2つの損得を比較する時に、話がややこしくなるのは、ローンがあるからです。「マイホームは買うべきか」という話と、「借金はすべきか」という話が混在してしまうと、本質が見えなくなります。
そこで、預金を3000万円持っている人が、全額現金でマイホームを買うべきかを考えてみます。不動産投資のもう1つの選択肢である投資用不動産を購入する場合も入れて、3つのケースを比較してみます。
1.3000万円を預金のまま保有する
2.3000万円でマイホームを購入する(ローンなし)
3.3000万円で不動産投資をする(ローンなし)
1.の場合は、定期預金をしたとしても、年間の金利は5万円程度です。元本は守られていますが、ローリスク・ローリターンの資産になります。
2.の場合は、預金の金利は得られなくなりますが、家賃を払う必要が無くなります。
3.の場合は、不動産賃貸収入が入ってきて、そこから家賃を支払うことになります。
リスクを取りたくない人は、1.を選択するしかありません。しかし、ある程度のリスクを取っても良いと言う場合は、2.と3.を比較することになります。純粋に経済合理性だけで考えれば、「賃貸収入>家賃」であれば、投資用の不動産を購入した方が有利になります。
つまりマイホームを購入すべきかどうかは
A 不動産のリスクを取っても良いか
B 賃貸物件よりも利回り計算で有利か
という2つの問いかけに「Yes!」と答えられる場合に限られます。Aに「Yes!」と言えない人は、そもそも日本の不動産を買うべきではありませんし、Bに「Yes!」と言えない人は、賃貸物件に投資をして、その収益で自分は別の賃貸物件に住めば良いことになるからです。
東京の都心部にある中古ワンルームマンションの投資利回りは、管理費などの経費差引後のネット利回りで4.5%前後です。つまり、自宅を賃貸に出したと仮定して、その利回りが4.5%以上にならなければ、経済的にはマイホーム購入は正当化できないということです。
例えば、3000万円のマイホームを賃貸に出したとして、年間135万円(月額約11万円)以上の家賃が得られるなら、マイホームの購入は割安ということができます。もし10万円でしか貸せないのなら、3000万円の賃貸物件から135万円の家賃を受け取り、その中から120万円を払って賃貸すれば、15万円節約できることになります(コストなどの細かい計算は考慮する必要あり)。
マイホームには、所有による心理的な満足感のようなお金に換算できない価値があるのも事実です。しかし、その前にまずは、マイホームの市場価値を賃貸マーケットでの利回りによって計算してみることで、冷静な判断ができるようになると思います。
<参考図書>
「臆病者のための億万長者入門」 橘玲
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。