なぜ今、歴史認識なのか?

訪米中の安倍首相はオバマ大統領との会談を終え、共同声明を発表しています。その会心の笑顔の二人の背後では歴史認識について高い関心を引き、盛り上がっています。首相のハーバード大学での講演に於いても学生から歴史問題を問われていますし、ワシントンではマイクホンダ議員らが元慰安婦と共に日本への謝罪要求を高めています。ワシントンタイムズの記事は「Japan’s wartime past still a volatile issue as prime minister visits Obama」とされ、過去をどう表現するのか、その姿勢に注目が集まっています。


歴史認識に於いて安倍首相が他の過去の総理大臣となにか大きな認識の違いがあるとは思えません。反省もしてますし、あの過ちを繰り返してはならないと何度も述べています。しかし、安倍首相のパーソナリティはどれだけ何を言っても出来上がったイメージとして壊せないのだろうと思います。実に残念なことであります。

日米関係に於いてアメリカが最も気にしているひとつは近隣諸国、すなわち、中国と韓国との外交関係であろうと思います。ワシントンポストにもあるようにオバマ大統領は日韓の間に立ち、ミディエーター(仲裁者)すらしてその関係改善に尽力を尽くしてきました。その中で日本と中国の関係は以前に比べ、そのテンションは下がってきているように見えます。インドネシアでの習近平国家主席との首脳会談は明らかに前回の習主席の尋常ならぬスタイルとは違っています。

前年比8割増しの水準となる中国人旅行客は日本を大いに楽しみ、自分の目で評価をくだし始めています。その余裕は中国国内の新中流層の増大による思想転換が進んできていることが一つ上げられましょう。一般に経済が好転しているときは国家間の関係は良化するものであります。同様に日韓関係が非常に良好だった時、韓国経済はブームであり、輸出主導型産業のみならず、国内の不動産は高騰を続けていたのであります。

となれば、ニューヨークタイムズにしろワシントンポストにしろ安倍首相の訪米に際してわざわざ過去問題に焦点を当てているのは安倍首相の思想そのものへの着目でしょう。しかしそれはマスコミの誘導でもあります。佐々江賢一郎駐米大使が先週の記者団へのブリーフィングで「歴史問題が首相の訪米に於ける主たるイシューになるとは思えない」とはっきり答えています。

ただ、残念なことにロビーグループの活動は凄まじく活発であります。それが本来の焦点をぼやかしてしまっています。声明はTPP、安全保障、世界外交などが中心で近隣諸国とは継続した和解の努力を表明しております。本来であれば経済、安全、アライアンスがヘッドラインを飾るべきであります。

今回の歴史認識問題は日韓の問題に絞ってもよいかと思います。その日韓は国交回復50周年で戦後70年と合わせて記念すべき年にあります。韓国では記念すべき仕切りに於いて過去を「総括」するのは儒教的思想なのだと思いますが、その内容は経済環境に影響を受けやすいとも考えています。ちなみに「総括」は狭義の意味で左翼的発想なのですが、それは国民の不満具合とも置き換えられないでしょうか?

日本ではそのような記念行事に於いて概ね、過去を風化させることなく、その反省で未来を切り開くというステートメントが主流です。安倍首相とオバマ大統領の共同声明も基調はその流れであります。

韓国のボイスを聞いていると政府のステートメントというより国民が政府に十分な信頼感を置いていないことから個々が動いているようにみえます。これがやけに歴史認識への関心の高まりの背景に見えてなりません。朴大統領はインドネシアの会議より南米を選び、帰国後も首相が辞任し大統領の指導力が問われるとき、絶対安静の休養を要する状態であります。これではフラストレーションを溜めた国民はマイクホンダに賭けたくなってしまいます。

歴史認識問題が盛り上がるその背景とは日米関係が引き締まり、日中関係も改善の兆しが見える中、韓国が取り残されてしまった同国の外交戦略の失態が大きく響いた結果ではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。