仕事と年齢、イチローと羽生善治

イチロー・青木の直接対決となったジャイアンツvsマーリンズ戦(日本時間の8日午前11時15分)で、イチロー選手(41)は「8試合連続安打をマーク(中略)。メジャー通算安打を2868本とし、ベーブ・ルースにあと5本と迫った」ようです。


彼の偉大さに関しては当ブログでも何度か触れたことがありますが、日本の生んだ偉大なスポーツマン・イチローは我々日本人の誇りであり、その大変な努力に対しては唯々敬意を表する次第です。

彼が何故あれだけのヒットが打てるかについては様々な要因があろうかと思いますが、その一つに動体視力が人並み外れて良いということが主因に挙げられると思います。

しかし、イチローも人間であるからには老化が起こらないことは有り得ないわけで、人間の身体においては眼が最も早く老化してきます。

万やむを得ない老化の進行に伴い動体視力の限界が露呈するその時、彼にとって一つの節目になるのではないかと思います。

此のイチローにせよ、先月19日「張本勲氏(74)の“引退勧告”を、力に変えて」ゴールを決め「自身が持つJリーグ最年長得点記録」更新中の三浦知良選手(48)にせよ、「為せば成る 為さねば成らぬ」ということを現実のものとしているソチ五輪銀メダリストの「レジェンド」葛西紀明選手(42)にせよ、彼らの想像を絶する努力・苦労の結果として歳を感じさせないような驚くべきパフォーマンスが出せているのだと思います。

但し、その一方で三浦選手自身が「28歳の選手と比べて20歳も違うわけですから、スピードでは勝てない。だからこそ一瞬の考えるスピードやポジショニング、ペナルティーエリア内での駆け引きで勝負しないと」とか、「本当はずっと出たいけど、シーズンを通していいパフォーマンスを続けるためには、どこかで休むことも必要じゃないかなと」等と言われている通り、スポーツ選手としての肉体年齢の壁という如何ともし難い問題がそこには付いて回ります。

その点、仕事によっては60歳であろうが70歳であろうがその全盛期がずっと続く人もいるわけで、「経験知」を重ねる中で判断力が高まり寧ろパフォーマンスが良くなって行くケースが多々あるというのも事実です。

私は天才棋士・羽生善治さんの強さに感心し彼の著書をよく読んでいますが、例えば彼はプレジデントオンラインの記事「若手に負けぬための秘密の習慣」の中で、「いろいろある選択肢の中から、何を捨てていくか。取捨選択の捨てるほうを見極める目が、経験知で磨かれるのだと思うのです。たとえていえば、経験によって羅針盤の精度がだんだん上がっていくイメージですね。(中略)こっちへいくより、あっちのほうがより確実ということが、経験知が上がるにつれて比例して上がっていくのだと感じています」と述べられています。

人間の判断など何時も正しいとは限らぬものですが、その妥当性を確立するによりスピーディーな判断を下す上では、経験知を上げることで同時に直観力が発達してきますから、やはりある程度歳を重ねた方がより良い判断が出来るような気がします。

羽生さんの場合は未だ44歳ということで年齢云々といった話でないとは思いますが、経験知を伴った判断力の向上あるいは直観力の練磨によって、より良いパフォーマンスが出せるようになるということは正しい気付きだろうと思います。

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