沖縄非武装は平和ではなく中台紛争への道 --- 宇佐美 典也

台風に巻き込まれて帰るタイミングを逃したので、久しぶりに安全保障のテーマでも考えてみたいと思います。


宮崎駿監督が「辺野古基金」の共同代表に就任されるとのことで、「沖縄の非武装化こそ東アジアの平和のための必要」ということを仰っているのですが、いくつかのジブリ映画のファンの自分としても大変複雑な気持ちになっています。

東アジアの安全保障問題というと当然中国の動向と切っても切り離せません。そしてその中国の第一目標はまぎれもなく台湾問題の解決にありまして、軍備も短期的には「台湾による法的独立阻止するための抑止力の獲得」、長期的には「日台紛争時の米国による介入を阻止する能力の獲得」を目指していることは明らかです。そんなわけで仮に本当に沖縄が非武装化したら真っ先に影響を受けるのは台湾と思われます。

図1中国台湾

近年中国の軍備は台湾を圧倒し始めており、平成26年度の防衛白書においては「中国は、台湾問題を解決し、中国統一を実現することにはいかなる外国勢力の干渉も受けない」というスタンスを取っていることを明記してた上で、中台の軍事力について以下のように分析されています。(以下引用文)

① 陸軍力については、中国が圧倒的な兵力を有しているものの、台湾本島への着上陸侵攻能力は限定的である。しかしながら、近年、中国は大型揚陸艦の建造など着上陸侵攻能力の向上に努力している。

② 海・空軍力については、中国が量的に圧倒するのみならず、台湾が優位であった質的な面においても、近年、中国の海・空軍力が着実に強化されている。

③ ミサイル攻撃力については、中国は、台湾を射程に収める短距離弾道ミサイルなどを多数保有しており、台湾には有効な対処手段が乏しいとみられる。

こうした状況の中で中国を将来にわたって抑止するには台湾近海に中国に対抗できる軍事力が必要、ということになってしまいまして、その役割を果たしているのは沖縄、というのは今更言うまでもない話です。その重しが外れればどうなるかは言わずもがなで、沖縄非武装化は決して東アジアの平和への道などではないでしょう。むしろ確実に中台紛争を引き起こすと考えるべきです。(むしろそうではないと考える要素が何一つない。。。。。)

そして台湾が中国の影響下に入ったら、中国に資源航路を抑えられることになり我が国の資源安全保障は危機的な状況を迎えることになります。

あまり憶測でも物を言ってはいけないわけですが、こうした事情を考えると日本国内の沖縄非武装化の主張の背景には中国の支援・工作があることも想像に難くないわけでしてそんなことを思いながら、李克強首相と河野洋平氏と翁長沖縄県知事が会談したなどのニュースを見ると、さもありなんなどと感じてしまいます。

ただ沖縄県民の負担感に関する翁長知事の主張はもっともでして、彼の知事就任時の「戦後70年になり、0・6%の面積に74%の米軍専用施設があるのは、やはりいくらなんでも理不尽でないかとということをベースにしながら、ぜひ日本の安全保障は日本国民全体で考えてもらいたいと訴えていきたいと思っております。」という言葉に十分に反論できる日本国民は皆無だと思います。

とはいえ国家間の約束となってしまい一時は沖縄県知事も同意した辺野古移設を覆すことは、日本政府としても非常に困難であることは、鳩山元首相が証明してくれたところです。そしてこの答えが無い状況の中で翁長知事は訪米という鳩山元首相と同じ道をたどりつつあるのを見て、デジャヴを感じざるを得ません。おそらく半年後には沖縄県民と日本政府、ひいては日本国民の間に深い深い溝ができるのでしょう。

市会の一市民である私などは完全にノーアイデアで、戦後70年という節目の年にこのような事態を迎えてしまったことを悲しむしかありません。少なくとも今のうちから、沖縄非武装化と辺野古移設問題を結びつけるようなことはやめて、せめて日米安保を大前提にした基地配置の在り方の国民的な議論が発展することを望む次第です。仮に普天間基地の負担がなくなっても72%の在日米軍基地は沖縄に残るのですから。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2015年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。