今日は日々見える電力業界での動きというものをちょろちょろとまとめて見たいと思います。
まずはご報告ということなのですが、JBpressさんでの隔週連載で政府のエネルギーミックス(=2030年のエネルギー源構成に関する議論)の方針についてまとめさせていただきました。
(1)論点となってきた原子力と再エネ電源の発電比率は、原子力が20~22%、再エネが22~24%と一定の幅を持たせる形で決着がついた。
(2)固定価格買取制度の予算は原子力発電による燃料費の削減分から手当されることが明確化された。これにより原子力政策と再エネ政策は一体的なものとなった。
(3)再エネ政策の趨勢としては太陽光発電の開発は今後抑え込まれ、バイオマス発電の開発が進むことが見込まれる。
(4)原子力発電に関しては、新規の原発の稼働と、40年を迎えた原発の廃炉と、追加投資による20年の運転期限の延長、のバランスを取りながら、稼働水準を20%程度に保つよう努力が図られることになる。
(5)温室効果ガスの削減目標もエネルギーミックス目標に準拠したものとなり、今後、温室効果ガスの排出量が多い火力発電の建設は環境省が厳格に管理していくものと推測される。
というところです。経産省としては環境省や大手電力会社や再エネ事業者の思惑が錯綜する中でかろうじてバランスを取った形です。
これに対して「再エネ業界の雄」たる孫正義氏率いるソフトバンクがどのように反応するかなどと思っていましたら、まさかの「東電とソフトバンクが電力小売で連携」というニュースが入ってきて耳を疑いました。
以下掘義人氏と孫正義氏との対談からの切り出しです。
「僕は「原発ミニマム論者」です。脱原発でもなくて減原発でもなくて、うんぬんでもなくて。原発はどうしても必要なら、つまり停電して産業が成り立たない、国民生活が成り立たない、本当のギャップは何キロワットだと。どうしても本当か? と。それは3年足りないのか? 2年足りないのか? その足りない期間だけ、次の手立てができるまで、足りないミニマムの部分だけ、3基分だけ、じゃあ再稼働を許しましょうというミニマム論のほうがベターではないか。」
言うまでもなく東電は世界最大の原発である柏崎刈羽原発を保有しており、当該原発の再稼働が経営再建の第一目標となっているのですが、その点についてソフトバンクグループはどのように考えているのか知りたいところです。このままでは余りに節操がない印象を覚えますのでソフトバンクグループとして「世界最大の原発はミニマムな原発」という理解をしていらっしゃるなら、それはそれでスタンスを表明すべきなのではないか、などと思うわけですが、それは無粋というものなのでしょうか。
この報道を聞いたとき始めは「そんなのありか!」と正直頭に血が上ったのですが、よくよく過去の孫正義氏の発言や行動を見ると、ご自身は「原発ミニマム論」を唱えて予防線を張る一方で、自然エネルギー財団に飯田哲也氏なり坂本龍一氏なり大野輝之氏なりのヘビーな反原発論者を集結させて政治勢力化するという手法をとっていたことがわかり、さすがの老練さを感じた次第です。
それでも何だか心のわだかまりが取れないので、個人の携帯・wifi等は今月いっぱいでソフトバンクから他社に切り替えようと思っています。どこにしようかな。。。
そんなわけで相変わらずの海千山千・魑魅魍魎が渦巻く電気業界ですが、ここらで一度電力システム改革の議論をまとめる必要が有ると思いまして、SSKさんの「電力小売自由化とビジネスチャンス」をテーマにしたセミナーで講演させていただくことにしました。
私自身は大きな制度改正の動向をざくっと紹介する立場でして、あとは現場を知る新電力やesco等の幹部の方々が現場や海外の先進事例を紹介するプログラムとなっています。なかなか電力業界への新規参入者が一堂に会する機会というのは無いと思うので、ご興味ある方は是非お越し下さいませ。
最後に我田引水の宣伝をして失礼しました。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2015年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。