クールジャパン戦略推進会議に寄せて --- 中村 伊知哉

前回お話しした政府・クールジャパン戦略推進会議。
ぼくが配付したメモを転記しておきます。


1. 政策の優先度向上を
知財本部でのコンテンツ政策に関する議論は、「デジタル・ネット化」と「海外展開」を2本柱(ないしこれに「人財育成」を加えて3本柱)としています。
クールジャパン戦略会議ポップカルチャー分科会による提言「飛び出せ、日本ポップカルチャー。」では、産業界、クリエイター、ユーザほか多様な主体の「参加型」で総合力を発信する政策が強調されています。

私はその双方に関わっており、いずれもその方向は正しいと考えています。しかし、これら政策は未だ他の領域に比べて十分な重みが置かれていません。
農業・工業社会では領土・資源を持たざる国だった日本は、情報社会では技術・知識を持てる国として生きたい。政府には、日本が更に成長を遂げる糧となる領域に対する政策の優先度を高めていただきたい。

2. 議論より実行を
コンテンツやクールジャパンに関する議論は厚みを増しており、課題も整理されています。
必要なのは、「実行」です。
知財本部でも昨年、アーカイブと音楽に関する2種のタスクフォースが置かれ、施策プランが編まれました。しかし、政策的な措置はこれからであり、民間はそれを待てず独自に動き出している面があります。

政府には、こうした民間の動きを後押ししていただきたい。民間主導のプロジェクトをすくい上げて、推進するアプローチがよいと考えます。
新たな課題の抽出・整理だけでなく、既に共有されている課題の解決に向け次々と手を打ち、成果を上げていくことを求めます。

3. 2020年対策を
コンテンツ集積地の形成や超人スポーツ構想など、東京五輪をにらみ、クールジャパン力の発揮に向けて立ち上がった民間プロジェクトもあります。世界のみなさんをおもてなしするため、ICTインフラを増強する構想もあります。

いま世界のメディア分野は、スマート化の段階を経て、IoTやウェアラブルなど新ステージに突入しつつあり、ちょうど2020年ごろに普及期に入ると考えられます。これを日本が後追いではなく、世界を先導することができるよう、この時期に施策を集中させることが重要と考えます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。