会議は楽しくないとね~ミーティングウェイ5カ条 --- 堀 義人

アゴラ

僕のキャリアは、日本の「ビッグ5」に入る貿易会社でスタートした。そこでの仕事は好きだったが、1つだけ嫌いなものがあった。それが、会議だ。


そこでの会議は、暗黙のルールに支配されていた。発言権を持つのは、ヒエラルキーの上層にいる年輩男性のみ。残りのメンバーは――まるでビクトリア時代の子どものように――「しゃべれと言われたときしかしゃべれない」運命だったのだ。自ら口を開けばひんしゅくを買い、リスクを呼び込むだけだった。

それに、たとえ若者が意を決して発言しても、何かが変わることはほとんどない。なぜなら会議の結論は、あらかじめ主要な出席者の間で決められているからだ。(この慣行は「根回し」と呼ばれる。もともと園芸に使われる言葉で、木の移植前に根の周りをあらかじめ掘っておくことを意味する)

いずれにせよ、僕の仕事人生の最初の数年に参加した会議のほとんどが、中身のない形式的な儀式に過ぎなかった。クリエイティブな議論は推奨されず、抑え込まれていた。

当時の僕は、もっとうまい方法はないものかと考え続けていた。会議とは、単なる情報交換の場ではなく、他者との対話を通じて学びとモチベーションを得られる場であるべきだ。「優れた」会議とは、自社の根本にある価値観を再確認させてくれるような、ポジティブなロールモデルや行動に触れられる機会でなければならない。

だからこそ、米国から戻った僕は、起業にあたって、意識的に日本の伝統とは反対のことをすると決めた。年功序列や男尊女卑、ゴム印などの古い慣行を廃すのだと。

さらに、自社の会議を学びとモチベーションの場にするために、「ミーティング・ウェイ」を明文化した。これは5つのシンプルなガイドラインで、全関係者にとって会議がポジティブな体験になることを目指すものである。

1. 議題の告知とオンタイムのスタート

・主催者は、必ず48時間前に参加者に議題と目的を告知する。
・会議は、必ずオンタイムにスタートする。

2. 会議の目的と時間を明確に

・主催者は、まずミーティングの目的を確認する。「今日のミーティングの目的は、」で始める。
・ミーティングの時間を予め確認する(どんなに長くても1時間を目安にする。平均30分程度がベストである)。「最大でも○○時には終わらせましょう」。

3. 建設的かつ集中的な意見交換を

・異質な意見やクリエイティブな意見を即座に否定せず、一意見として尊重する。聞きたいのは、議題から外れない範囲で、最大限に幅広い意見である。
・感情的な発言、合理的ではない発言、必要以上に冗長な発言は慎む。

4. 異質な意見を受け入れながらも決まったらコミットする

・決定事項に賛同しなくとも、一度決まったら全員でコミットして、行動する。(これは、ヒューレットパッカードから拝借したアイデアだ)

5. 決定事項は速やかに関係者に告知する

・原則 24 時間以内に EMAIL で会議レポートを送付する。
・レポートは不参加者にも送り、異議を唱える場を確保する。
・意思決定に不服がある場合には、会議の再招集を要請し、場合によっては決定を覆すことができる。
・この「抗議権」は、意思決定プロセスのどの部分にも強制がないことを確保している。

この5つの原則のおかげで、当社の会議は効果的・効率的・オンタイムでありながら、民主主義・透明性・完全なる信頼性を保っている。

(組織の長として追記しておきたい。僕自身は、会議中はできるだけ口を慎むようにしている。そうすることで、全員に積極的に発言してほしいからだ。このリーダーシップ哲学については、「最高のリーダーの条件・・・それは何もしないこと」という記事で書いたので参考にしてほしい)

当社は今年、社員のフィードバックをベースに企業を評価するウェブサイト「VORKERS」の調査で、「社員の士気ランキング」第1位を記録した。建設的な枠組みの中で全員に発言権を与えているという事実が、選出の主な理由だったのだと思う。

そう、信じられないかもしれないが、会議は社員をうんざりさせるのではなく、モチベーションを高めることができる。退屈ではなく、楽しくすることができるのだ。

あなたの職場ではどうだろう?異質なアイデアを口にしたり、欠席した会議の決定事項に異議を唱えることができるだろうか?会議に出席することで、エネルギーとモチベーションが高まるだろうか――それとも、生きる気力を失うだけなのか?

ぜひ、意見を聞かせてほしい。

(訳:堀込泰三)

この記事は、2015年5月21日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。


編集部より:この記事は堀義人氏のブログ「起業家の冒言/風景」2015年5月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「起業家の冒言/風景」をご覧ください。