憂慮すべき南シナ海問題

中国が南シナ海の浅瀬を埋め立て、飛行場を建設しています。主要各国は強い懸念を示しており、G7では安倍首相が主導して本件を議論し、また首相はフランスのオランド大統領とも問題共有をしました。また、先日はフィリピンのアキノ大統領が日本を訪問していた際にも主要なる議題となっており、日本との協働が持ち上がっています。


本件、非常に懸念されるべき問題ですが、国内では遠い海の第三国間の話といったトーンであり、メディアがフォーカスしているとは思えません。確かに中国からの訪日客は旅行に爆買いで大きな経済効果をもたらしており、声を出しにくいところもあるのでしょう。メディアは広告収入で成り立っていますから中国に対して厳しい論調となれば広告主から苦言が出てくるものです。そのためついトーンダウンしたり、記事にならなくなる結果、国民にバランス感覚の取れた情報をもたらしてくれているかといえば怪しいものであります。

南シナ海の問題は尖閣諸島の問題に似ています。一つは領有権の問題、もう一つはそこに海洋資源があり、また漁場としての直接的利益がもたらされます。しかし、本当の目的が軍事目的であることは確実です。既に埋立地に自走式の火砲が2台配備されており、今後、その軍事配備がかなり進展するものと思われます。

中国が南シナ海、東シナ海の進出にこだわるのは中国軍が太平洋に抜けるルートの確保であります。現在は日本、台湾、フィリピンなどで中国が太平洋に抜けるルートは限られており、ここに穴をあける必要があると軍事戦略上、長く指摘されていました。そこに南シナ海で領土の領有関係が不鮮明なこの地で先取的行動に出ていると言えましょう。

国家が経済的に力をつけるとその発言力が国際会議で高まります。そして更に自国に有利な展開を図るには軍事力という腕力を見せつけ、その主義主張を強引に通そうとします。一般の人の前に怖そうなお兄さんが来たらあまり反発できないのと同じです。腕力があれば対等の議論以前の問題です。だからこそ、様々な国が核を保有しようとするわけです。

中国は中華思想の本家本元でありますがこれは中国を中心とした天動説のようなものだと考えて頂いて良いかと思います。更に中国の衛星である韓国がその周りをクルクル回り直接的便益を受け、あとの国家はその他の星々で支配下にあると考えて良いでしょう。最近、私は中国人から中国語で話しかけられることが多いのですがそのうち中国語を世界標準語としようなどと言い出しかねない気がします。

先進国を始め、近隣諸国は中国の一方的な行動に厳しく批判していますが、それを止めることが出来ないのが現状であります。今後、本件がヒートアップしてきた場合、アメリカはその近海に海軍を貼り付けることになるのでしょうがそれは新たなる緊張関係を作り上げ、いくらでもヒートアップすることに繋がります。

それでも収まらない場合、通常は経済制裁を施すのですが、圧倒的な富裕層と成長著しい中流層を抱える同国に正面切って経済制裁が出来る国はないでしょう。例えば先週バンクーバー市長が中国人の不動産爆買いによる不動産価格高騰に対して一定の抑制政策案を大々的に打ち出したところわずか2日後に州知事から一蹴されています。

本件は各国の足並みが揃わない点が最大の懸念であります。アメリカも現状程度の動きは出来てもそれ以上の抵抗はやりにくいでしょう。今回のG7でも安倍首相が南シナ海問題を声高に訴えてもドイツが議長を務める以上、今はウクライナ問題が先決となり、次回のG7で安倍首相にその件を仕切ってもらいましょう、とメルケル首相にあっさりかわされています。

本件は日本の自衛権の問題にも当然繋がります。アキノ大統領はフィリピンでの自衛隊活動に協力すると発言していますが、そのあたりの考え方についても与野党間で激しいやり取りが続くことになるのでしょう。しかし、はっきり言えるのは尖閣問題が今、前面に出てきていない理由の一つは日本を刺激すれば日本は自衛をより進め、中国に好ましくない結果をもたらすことに気がついたことも大いにあるでしょう。これがいわゆる「強そうに見せる」戦略であります。日本の軍備力は世界でも既に有数なのですからその事実をうまく利用しながらアジアの平和の維持を続けなくてはいけないでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 6月8日付より

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。