スカイマークの再建計画の行方が読めなくなってきました。最大の債権者であるイントレピッド社が新たなる再建計画を裁判所に持ち込み、夏に開かれるであろう債権者会議で全日空案と投票により決定する可能性が高まっています。このような再建計画の投票による選択は珍しく、また、国内派である全日空案とイントレピッドという外資との真っ向からの対立になりますので非常に興味深い行方であります。
イントレピッド社はスカイマークに航空機をリースしていたため、債権額が大きくなり全体で3089億円のうち1150億円分の権利を所有しています。一方、再建計画が承認されるには過半数以上の賛同を得る必要があるため、イントレピッド社の再建計画案を抑え込み、全日空案にするには第二の大口債権者であるエアバス社(880億円)を押さえることが絶対不可欠となります。ところがエアバス社は全日空案に同調していないとも言われ、本件の行方は全日空側には現状、不利な展開となっています。ちなみに全日空と共同歩調をとってきている投資事業会社のインテグラルは航空業界には全くノウハウを持っておらず、今のところ全て全日空頼みとなっています。
さて、このスカイマークの倒産とその再建でありますが、日本の航空業界の最近の歴史の縮図のようなものを見て取ることができます。日本航空が倒産した際、民主党から懇願された稲盛和夫氏がその手腕を発揮し、見事に再建、再上場を果たし、今や年間1752億円(15年3月期連結、経常利益)も稼ぐ優等生となりました。民主党時代の唯一の功績と言われるのは国(=民主党)による支援により支援機構が得た利益は3000億円にも上るためです。そのため、自民党派からすると面白くないため、自民に政権が移ってからは全日空にフォローの風が吹いているのです。
事実、エアドゥ、ソラシド、スターフライヤーは全日空色ですから同社としてはここ数年、ライバル日本航空に対して有利にことを進めてきました。スカイマークの再建については全日空が何処まで本気で乗り気だったのか分かりかねるところがあるのですが、少なくとも再建請負人としてそのままうまくいくはずでありました。
世の中、思い通りにはならないそのきっかけはその再建計画の内容であります。中型機の導入がない同計画ではイントレピッド社としては全く旨みがありませんでした。そのため、全日空主導の再建計画に反対し、別の再建計画を持ち出したのであります。また、弁済率は同じ5%でありますから数字の上でのそん色はありません。唯一、再建を主導する航空会社が誰なのか決まってないだけですが、多分、デルタあたりが出てくる気がします。
デルタは以前から日本進出が野望でしたので挑戦権が与えられるとすれば願ったりかなったりでありましょう。
日本はただ、資本規制があり、日本国内での定期路線開設の場合には外国資本が1/3以下に抑えられなくてはいけません。よってその与件さえクリアすれば外国航空会社が主導する第三の羽根が日本国内で飛ぶ可能性は大いにあります。ちなみに中国最大のLLC、春秋航空が日本法人、春秋航空日本を設立し、スプリングジャパンの愛称で国内定期路線を飛ばしておりますが、同社も出資は1/3に抑えています。
今回のスカイマーク再建劇は日本の政治が根本原因を作った新たなる国内航空業界の戦国時代の幕開けとなる可能性があります。私はスカイマーク再建計画を見た時点で多分、全日空ははじかれる気がしました。それは政治力による采配が今日の日航VS全日空の構図を作ったものであって経営や顧客目線はどうだったのか、二の次だったように思えたからです。
事実、全日空の傘下という事は新生スカイマークは全日空を凌駕するような斬新なアイディアは出せません。航空運賃も陳腐化したものになるでしょう。日航と全日空の戦いは結局似た者同士を生み出し、圧倒的な差別化を図ることが出来ない井の中の蛙ともいえるのです。ならば、どこかの外資が日本国内の航路に乗りこんで来た方が刺激的なのかもしれません。
もちろん、今後の展開の予測は難しく、エアバス社が全日空案に賛同するかもしれません。エアバス社も全日空を敵に回したくないでしょう。そのあたりは政治力です。今回のスカイマーク再建劇は思わぬ水面下の戦いが激しく行われることになりそうです。再建企業が決まった時に出る裏話本が楽しみであります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月15日付より