中国の株式市場は下落の始まりなのか?

上海総合指数の急落が話題になっています。

昨年の今頃、その指数は2000を少し上回る程度でした。が、夏ごろから急速に資金が株式市場にシフトし、6月12日には遂に5178まで駆け上がっていきました。チャートを見ると途中3度ほど小さな調整を入れていますが、ほとんど、強気の買いが続いていました。1年で2.5倍に化けるのは個別銘柄でも少ない中で上海の指数そのものが化けてしまうのですからそのマグネチュードがいかにすごいものか想像できるかと思います。

そのチャートは今年3月後半から特に急騰しており、いわゆるピークに向かっていく典型的な形になっており、いつ、急落してもおかしくない状態でした。それが起きたのが先週であります。月曜日の高値の5176から一気に下落の一途を辿り4476まで落とし込んだのです。率にして13.5%であります。

上海株の特徴はその8割を個人が占めていることであります。そして指数が上昇するという事は株式市場参加者が推奨銘柄や街の中の「囁き」で情報をゲットし、狂気乱舞しているとしか考えられません。売買高で世界一位、時価総額で世界二位の市場が示す健全さとは程遠いでしょう。

この背景には理財商品の頓挫により行き場を失ったマネーという構図も見て取れます。いわゆる不動産投資に繋がった理財商品は様々な問題を残し、破たんしたものも出てくる中で人々は迷信から解放され、株式神話に乗り換えたとみるのはすっきりします。

中国人は元来マネーが大好きであります。マネーを増やし、見栄を張ることは人生の最大の生きがいでしょう。一部の富裕層は外国に直接投資する方法も知っています。海外不動産では今や、中国人が圧倒的なパワーを持っています。なぜなら買い手は経済計算を根拠としているというより、欲しいから買うスタイルだからでしょう。最近では同じ不動産でも海外ホテルにも触手を伸ばしているとされています。

中国の保険業がニューヨークの ウォルドルフ アストリアを19.5億ドルで購入したほか、最近マンハッタンにオープンしたばかりの超高級ホテル バカラは一室当たり200万ドルを越えた金額で中国企業が手にしました。これは今までの最高だったプラザホテルの取引額を抜いています。中国系のホテル買収は世界中で起きており、ここバンクーバーでもある著名ホテルがとてつもない金額で取引されるかもしれない情報を耳にしています。

一方、中国国内に滞留するマネーも投資先とリターンを求めています。今、中国人と話をすると15%程度の利回りではそっぽを向かれてしまうこともあります。80年代後半の日本のバブルようなものだと思いますが、過熱した市場をどう冷やすのか、一般常識では考えにくい状況にあります。

上海市場の8割が個人投資家である点に於いて心理状態で左右されやすくなりその結果として先週のような大暴落を経験します。が、一方で「これは絶好の買い場」と思っている人も多く、このままずるずる下がらないと思われます。いわゆる高所恐怖症とは日本の投資家が日経平均20000円でビビっていることを指しているのですが、中国人は何処まで上がれば高すぎると思うのでしょうか?

下がらない一つに弱気になる精神論以外に下落させる方法がないことがあります。信用の売り方の市場形成が十分ではないため株価上昇で買い戻しを余儀なくさせられ、火に油を注ぎ込む状態にあるのも一つあるでしょう。

あるいは新規上場が続くこともあります。中国は伝統的に新規開店、新装開店のご祝儀は当たり前で初めにみんなで盛り上げる習慣があります。同じことが新規上場銘柄にもあり、そのために株価が暴騰しやすい特性があります。

日本人のみならず、欧米人のソフィスティケートな投資家には理解しにくいものがあると思います。経済成長率が6%台に落ちても株価は数倍というのは潜在市場の奥深さのおとぎ話なのでしょうか?トリクルダウンとは正に中国の為にあるのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月22日付より