ヨーロッパとイスラムの戦いは十字軍以来ずっと続いているが、オスマン帝国が衰退して以降、中東地域の多くは英国やフランスなどの植民地となり、彼らが実質的に撤退した後は米国が同地域へ主導的に関与してきた。東西冷戦を背景に、またイスラエル建国も影響し、米国は中東を西側に取り込んで安定化させることに腐心する。
しかし、中東諸国諸地域は、それこそ対イスラエルのアラブ・ナショナリズムの方向へ向かい、さらに各諸国各部族各宗教勢力の間には強い反目や抗争が起き、米国の意図した通りにはなかなか動かなかった。米国のイニシアティブはイスラエルとアラブ諸国の対立関係に引きずられ、対ソ連携で協調させようとした方向から大きくズレていく。
その後、中東の石油が世界戦略上重要なキャスティングボートを握るようになり、またイラン革命や旧ソ連のアフガン侵攻とその失敗などがあり、それまで間接的な関与にとどまっていた米国の中東政策は次第に同地域への直接的な軍事介入を指向するようになる。さらに、米国にとっての誤算は、1990年のイラクによるクウェート侵攻だった。それまで「米国のイヌ」だったフセイン政権の変節は、湾岸戦争を引き起こす。
旧ソ連のアフガン侵攻時にゲリラ戦を戦ったオサマ・ビン・ラディンらを米国中央情報局(CIA)が援助していたように、中東に対する米国の間接関与には対立する諸国や諸地域、諸部族、宗教派閥を操るための諜報活動が含まれていた。フセイン政権に対しても同じだが、これら米国が育てた政権や勢力が、テロ国家やテロリストになって米国に刃向かってくるようになる。
2001年の「911」はイラク戦争とアフガン紛争、そして対テロ戦争を引き起こし、多くの米国人が兵士となって中東で戦い、傷つき、死んでいくようになった。戦場から帰還した元兵士たちも精神を病み、社会へ溶け込めず、彼らの存在は米国の大きな社会問題にもなっている。イラク戦争で多くの「テロリスト」を狙撃した兵士を描くクリント・イーストウッド監督の映画『アメリカン・スナイパー』は、そうした帰還兵士の悲劇を描いて話題になった。
米国の元共和党上院議員、エリザベス・ドール女史は、基金を設立して軍関係者やその家族を支援するキャンペーン活動をしている。その夫、ボブ・ドールも第二次世界大戦で右腕の自由を失った傷痍軍人だ。表題の記事は、俳優のトム・ハンクスが彼女の「知られざる英雄たちキャンペーン」に賛同した、と書いている。彼は民主党支持のはずだが、こうした活動に思想信条の別はない、ということなのだろうか。
映画『アメリカン・スナイパー』の主人公は、天才的な狙撃手としてイラク戦争で多くの「敵」を殺した実在の人物だ。彼は2009年に除隊し、自身がPTSDになった経験を生かして退役軍人らを援助する活動をしていた。しかし2013年2月、PTSDに悩む元海兵隊員との射撃訓練中、その相手に射殺されて亡くなった。
MILITARY CONNECTION
HANKS WILL HEAD ‘HIDDEN HEROES’ CAMPAIGN
New immigration rules will cost the NHS millions, warns nursing union
the guardian
英国の看護師組合が、同国の新しい移民法が国民保健サービス(National Health Service、NHS)に過大なコストを課すと警告している、という記事だ。新しい法律では、EU出身者以外、つまり実質的には発展途上国の外国人看護師だが、彼らが6年後でも一定の所得を得ていない場合、強制送還されてしまう。看護師の養成や雇用確保には、多額の税金が投入される。日本でも少子化による人材不足が予測され、インドネシアやフィリピンから外国人の介護士や看護師を受け入れようとしたが、彼らにとって日本の国家試験の壁は厚く高く、また試験の合格しても日本に定着せずに帰国するケースも多い。日本の取り組みにも厚労省のバラマキ行政があり、これは現在、失敗した、とみなされている。ちなみに世界各国で看護師の資格には多種多様なものがあり、米国の「NP(Nurse Practitioner)」は医師と看護師の中間的な存在で問診や検診など医療行為や薬の処方や投薬などもでき、ほかにフィリピンなど医療行為ができる国は少なくない。医師だけが独占的に医療行為を囲い込んでいた日本でも、救急救命士が簡単な治療を行うことができるようになったが、基本的にはあくまで電話などによる医師の指示が必須だ。日本に外国人介護士や看護師が居着かない理由は、こうした高く独占的な医師の地位と彼らの仕事内容の乖離によることも無視できない。
AN ELECTROMAGNETIC CATAPULT FOR HURLING PLANES INTO THE AIR
POPULAR SCIENCE
航空母艦から航空機を発進させるためには、揚力が発生する速度まで機体を推し進めなければならない。ジェット推進でも航空母艦の飛行甲板は短すぎるため、各国は艦船搭載用のカタパルト(Aircraft Catapult、射出機)と呼ばれる機構を開発した。世界で初めて航空母艦から航空機をカタパルトで射出することに成功したのは米国海軍(1922年)だが、その際の動力源は火薬だった。動力源には、油圧や空気圧、蒸気圧、電力など多種多様なものがあり、この記事で紹介している米国海軍の方式はリニア電磁式のカタパルトらしい。現在のものは蒸気圧で、これは圧が上がるまでに時間がかかる。リニアモーターによるカタパルトは、省エネ省スペースでメンテナンスも簡単、正確な操作も可能でいいことずくめだが、この動画にあるようにまだやや力不足のようだ。
アマゾンが、グーグルグラスみたいな端末を考案中
GIZMODO
視覚情報とリンクするウェアラブル端末は、まだコンタクトレンズ型が実用化されていないので当然、この記事で紹介されているようなメガネ型に収斂する。しかし、Google Glassが失敗したように、この手のガジェットの歴史を振り返れば死屍累々だ。メガネ型端末のデメリットは何か。実際にこれをかけている相手と会話する場面を想像すればわかるとおり、気もそぞろに顔の横についたモニターをチラ見している相手の眼球以外のカメラに相対することに受け手側が強い違和感を抱くからだろう。これは、人間同士のコミュニケーションに機械が介在するときに障害になるものは何か、という話でもある。いずれにせよ、コンタクトレンズ型の登場まで懲りもせず同じようなメガネ型ウェアラブル端末が出ては消えていくのだろう。
PENTAGON CONFIRMS ISIS ‘DIRTY BOMB’ CLAIMS
WND
いわゆる「ダーティ・ボム(Dirty Bomb、汚い爆弾)」とは、爆発の際に放射性廃棄物などの核物質を拡散させる爆弾のことだ。大きさは小銃から打ち出される小さなものから航空機などから爆撃する大型のものまで多種多様だとされる。また、爆発物に放射性廃棄物を混ぜるだけで作ることができるため、アルカイダなどイスラムテロ組織が仕掛け爆弾などとして開発している、という報告も多い。いわゆるイスラム国(IS)は、イラクの核関連施設や生物学研究センターなどを占領し、そこから核物質や生物化学兵器などを得ている。この記事では、米国ペンタゴンが、ISによるダーティ・ボムの開発を確認した、と書いているが、この核汚染物質はイラク第二の都市モスルの大学から入手したらしい。実際、核物質や放射性廃棄物は我々のごく身近にある病院などにも置いてある。ISの脅威にさらされている地域のみならず、世界中で管理を徹底してもらいたいものだ。
アゴラ編集部:石田 雅彦