7月1日に国税庁が今年の路線価を発表しました。これは相続税や贈与税などの算出に影響するもので新聞の社会面でも「うちにも相続税がかかるのか」といったサブタイトルが並んでいます。相続税については個々人の問題になりますので別の機会に取り上げるとして日本の不動産、特に都市部において今後どうなるか、検討してみたいと思います。
まず、発表になった数字は全国平均でマイナス0.4%と昨年から0.3%ポイント改善しています。来年にはプラス転換になる可能性は大いにあるかと思います。特に目立つのが震災で被害を受けた宮城、福島の路線価が2.5、2.3%アップと二年連続で回復基調を辿っています。また東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)と関西圏(大阪、京都、滋賀)、中京(愛知)及び福岡がプラスで都市圏の回復が明白となっています。
一方、秋田、島根、佐賀の下落が止まりません。これは同日に総務省が発表した人口動態調査と重ねてみるとよくわかるのですが、人口減一位の秋田をはじめ、人口減と路線価の下落率はほぼ相関関係があります。つまり、来年、仮に路線価がプラスかそれに近いところまで回復したとしてもそれは統計上の平均値であって都市圏の価格上昇が地方の下落分を補って余りある状態、つまり、二極化がより進むということでほぼ間違いないかと思います。
つまり、平均値だけ見ていると騙されやすいわけで一番簡単なのは自分でインターネットで路線価を調べてみることが肝心です。検索で「路線価」と入れるだけで一発で一番上に出てきますからそこから自分のエリアを探して前面道路がいくらするか見るのが良いでしょう。もう一歩進んで調べるなら過去のデータもそこにありますから数年分拾い上げて自分の家の路線価の推移を見たらよいかと思います。
東京の住宅街でも2-5%程度上がっているところが多いかと思います。当然ながら相続税の算出に大いに影響してきます。
ではこの路線価を含めた不動産価格は都市部ではこのまま上昇傾向が続くか、というお題ですが、多分、オリンピックまでは上昇するとみています。よって、都市部の商業地に近い不動産はあと4-5年で2割程度の上昇はあってもおかしくないでしょう。
何故都市部の不動産価格が上がるかといえば投資マネーが入り込んでいることが挙げられます。特に商業地は人口動態とは別にその地でどれだけビジネスが繁栄するかですから、訪日外国人が増えてお金を落とすようになれば不動産取引も活発になり価格は跳ね上がります。
また、住宅について言えば中国人など海外のバイヤーが不動産を購入する姿が目につきます。これは日本の不動産が国際水準から見て円安効果もあり、大バーゲンの状態にあるからです。また、中国人は不動産を所有しても空っぽで放置し、人に貸さないでじっと持っている人が多いですから日本人の人口が減ってテナントが見つからないのはあまり気にしないのであります。
ところで不動産価値を土地と建物という無機質な物体と捉えているとこれからの不動産市場を見誤ります。海外における不動産は付加価値が大きくつく物件が注目されています。例えばハワイなどリゾート地では海のそば、サービスがよい、全室海向き、部屋が快適な広さがある、アメニティが十分にあるのが最低条件ですが、建物の見栄えがいいといったデザイン性やセキュリティを求めるようになってきています。つまり、地震の多い日本では難しいのですが、奇抜な形の建物やランドマーク的な物件は物件として大きな価値と需要を生み出しつつあります。
一方で品川はなぜつまらない街かと言えばランドマークを作らず、味気ない開発を進めたからでしょう。汐留もしかり。JRは基本的に鉄道は得意でも不動産開発は下手で、一般にそのような評価もあるようです。その点からすれば今後、注目は渋谷が一番で、新宿も再始動するかもしれません。キーは老若男女が集まる活気、大学などの誘致、外国人が行きたがる要素です。私にとって品川は乗り換えても降りる駅にはなりえないのです。
最後に地方創生を唱えていますが、申し訳ないですが、今のやり方は総花的だと思います。地方の不動産を含め、活性化させるなら散在する集落を街規模にまとめあげ大規模農業を取り入れやすくすると共にインフラなどをバラバラにせず、集める工夫をすべきでしょう。土地交換で集積させる工夫を取り入れたら良いでしょう。今のままでは耕作放棄地がいくらでも増える悪循環となります。要はアイディアだと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 7月2日付より