安倍総理の70年談話に望むこと(3) --- 堀 義人

日本の貢献を示し、未来指向であれ

戦後70年の首相談話に関する「21世紀構想懇談会」の第3回目は日本の戦後の貢献を、第6回目は今後のビジョンをそれぞれ討議した。僕の発言要旨を基に、まとめて直言する。

懇談会の委員には歴史学者がたくさんいるため、過去を振り返ることが多くなりがちである。「今週の直言」第310回で紹介したように、ゴー・チョクトン・シンガポール名誉上級相(前首相)は、今年の国際交流会議「アジアの未来」のスピーチで、車の運転を例にとり、「運転する際にはたまにバックミラーを見なければならないが、基本的には前を見ることが必要である」と述べていた。安倍晋三首相の戦後70年談話は、バックミラーで後ろ(過去)を見て反省しつつも、前(未来)を見て多くを語り、現在までの日本の貢献を含むものになればと希望している。

具体的には、以下の4つの貢献を談話でぜひ語ってほしい。
第1に、教育、科学、文化における日本の貢献である。この貢献をこれからも日本の強みとして続けていきたい。

第2に、自由、民主主義、法の統治、人権尊重といった価値観における貢献である。価値観を共有する国々と共に、法の支配に基づいた良き世界をつくっていくのだ。

第3に、経済と政府開発援助(ODA)における貢献である。先日亡くなったリー・クアンユー元シンガポール首相が、ある会議で、雁行型経済発展論に言及していた。東アジアでは、日本が経済的に他国を引っ張ってきたという事実が広く知られている。人的、技術的、経済的な面で、今後とも世界に貢献していきたい。

第4に、平和貢献である。懇談会の岡本利夫委員も言っていたが、日本が戦後70年間平和を保てたのは、憲法9条が存在したためではなく、日米安保体制のおかげである。また、米国にとって日本は多数の同盟国の一つであるが、日本にとって米国は唯一の同盟国である。そういう観点から、(中国の台頭がある中で)今後の日本と世界を考えていく必要がある。

日本は国連安保理において、非常任理事国を他のどの国よりも長く務めてきた国である。安倍政権は地球儀を俯瞰する外交、積極的平和主義の外交を進めている。不戦を誓い、過去を反省しつつ、未来へのコミットメントを示す戦後70年談話になることを期待したい。

今回の談話はあくまでも戦後100年を視野に入れたものである。日本の戦後の貢献を語るとともに、30年後、40年後を見据えて、日本の進むべき方向をビジョンとして描いてほしい。そうすることで日本の若者は勇気を得るし、海外の理解も得られるものと考える。

2015年6月29日
一番町の自宅にて執筆
堀義人


編集部より:この記事は堀義人氏のブログ「起業家の冒言/風景」2015年7月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「起業家の冒言/風景」をご覧ください。