お金を貸して、不動産をとる

借金して不動産を買う。実に、ありふれたことだ。むしろ、現金で、ぽんと不動産を買うことのほうが稀だ。要は、不動産には、お金を貸し易いのだ。


不動産にはお円を貸し易いということ、そこのところが、不動産投資の鍵というか、そもそもの金融の基本的論点なのである。不動産の話を始めると、きりがなく深くなるのは、不動産が高度に金融の本質と絡んでくるからである。

不動産は賃料というキャッシュフローを生むものである。しかも、その将来のキャッシュフロー測定が比較的容易にできる。安定的なキャッシュフローが見込めるから、元利金の弁済の計画を立て易い、つまり融資を組み易い、とまあ、そういうことである。

これを金融の視点から逆に考察すると、融資が成り立つためには、融資対象の事業のキャッシュフローの予測可能性が高くないといけない、ということになる。

また、不動産は、担保に供し易い。その担保権も、登記の仕組みにより、容易に保全できる。これも金融の視点からみれば、なんらかの債権の保全を図る仕組みがない限り、融資は行い得ないということになる。

金融の視点からみて、担保もとれて、キャッシュフローの見込みも立ちやすいから、不動産取得には、簡単に融資がつくのである。

融資を得やすいからといって、融資を受けるべきだ、ということにはならないはずだが、実際には、融資を受けられるならば受けたいという意向は、強く働く。貸し手からみて貸し易いということは、全く同じ理由で、借り手からみても借り易いということになってしまう。いうまでもなく、借金して不動産を買うほうが、不動産投資の期待収益が大きくなるからである。

しかし、理の当然として、期待収益が大きくなれば、危険も大きくなる。不動産で損をするのではない。借金で損をするのである。借金で損をするとは、担保に供した不動産を失うことである。

お金を貸して、そのかたに、不動産をとる。それもまた、金融の本質である。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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