本日の日経新聞朝刊の記事によれば、公的年金の運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年3月末時点の運用資産における日本株比率は22%に上昇。また外国株の比率も1年前の15%から20%超まで上昇したようです(写真)。
2014年度の国内株への投資金額は3兆9185億円となり、海外投資家の買越額である2兆5千億円を上回りました。つまり、日本株の上昇はこのGPIFをはじめとする国内の公的資金の資産配分比率の変更が大きな要因になったということです。
GPIFの日本株の配分状況は6月末時点では株価の上昇によってさらに比率が高まっていて、運用の目安である25%の上限にほぼ到達しつつあるという試算もあります。そうなると、追加での日本株購入は期待できなくなります。もし株価が上昇して比率が25%を超えてくれば、逆にリバランス(配分比率の調整)で売られる可能性さえ出ていくるのです。
日本株の上昇の要因となった公的な資金の流れは、市場では「クジラ」と呼ばれています。その筆頭が上記のGPIFですが、地方公務員共済組合連合会などの共済年金もGPIFと同じように日本株比率を高めています。
また、かんぽ生命保険とゆうちょ銀行も株式上場を控え、運用収益を高めるために資産運用の構成比率を株式ウエイトを高める方向に変更させています。そして日銀もETF購入によって日本株の資産を増やしています。
この「5つのクジラ」の資金が日本株式に流れ込んだことが、今までの株価を支えてきたとすれば、これらの「クジラ」がいなくなると日本株の買い手が一気に減ってしまい、上昇スピードが鈍化するリスクが高まります。
株式市場の買い手は公的資金だけではありません。外国人投資家や国内の個人投資家も重要なプレーヤーです。しかし、上昇を支えてきた1つの要因が消えつつあることは覚えておいた方が良いでしょう。
2014年度のGPIFの資産運用益は前年度比49.6%増の15兆2922億円で、運用利回りは12.27%と過去最高になりました。リスク資産を増やす判断が奏功した訳ですが、逆に株価が下落したり、円高に振れた時のリスクも高まったと言えます。
GPIFだけではなく、「5つのクジラ」と呼ばれる公的資金の資産運用に関する情報は、これからも極めて重要なマーケットの変動要因になると思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年7月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。