ドル相場は、2014年後半から約12%上昇してきました。輸入物価指数が低迷するほか、鉱工業生産はさえず。米1-3月期国内総生産(GDP)が1年ぶりにマイナスに落ち込んだように、目に見えて米経済に打撃を与えています。フィッシャー米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、17日の講演で「インフレは低過ぎる水準にあり、2%へ押し戻す必要がある」と発言。国際通貨基金(IMF)が年内利上げ先送りを何度となく要請しているのも、ドル高と低インフレが根拠を与えています。
決算にもドル高の爪痕は明らか。投資家に大喝采で迎えられ17日の相場でS&P500構成銘柄で過去最高の上昇率16.8%を遂げたグーグルでさえ、4-6月期は為替差損で6.9%下押し。ジョンソン・エンド・ジョンソンの海外部門の売上にいたっては、14.8%に及びました。
現時点で負の効果が目につくドル高は、GDPにどのような影響を与えるのか。ニューヨーク連銀が、貿易に焦点を当て分析しています。
各通貨でのドル高は、2012年を100としてご覧の状況。リーマン・ショックの余波やギリシャ債務問題に揺れた2011年に一時75.78円と対ドルで最高値をつけた反動か、対円でのドル高が著しい。ユーロは直近で下落が進んで来た様子が伺えます。緩やかなドル・ペッグを採る人民元は、それほどでもありません。
肝心のGDPへの影響はというと、NY連銀がシミュレーションした結果によればドルが10%上昇したケースで輸入額は1年後に0.9%、2年後に1.6%増えるとの数字が弾き出されました。輸出では1年後に2.6%減、2年後に3.5%減となる見通し。純輸出が落ち込むためGDPは1年目に0.5%、2年目に0.2%押し下げられる計算です。
インパクトが大きいと捉えるか、減退してくため気にしなくても良いとスルーするか。少なくとも株式相場の投資家はナスダックが16日に続き最高値を更新して引けたように、ドル高効果のはく落を先取りして買い手にまわっているように見えます。
(文中写真:NY連銀、カバー写真:≪ м Ħ ж ≫/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年7月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。