正直申し上げると債権者集会に於いてスカイマーク案(ANA支援)で一発可決するとは思っていませんでした。イントレピッド社があれだけ有利な債権額の投票権を持っていたのにこの結果を見る限り、イントレピッド社案にほとんど誰も賛同者がなかったというあり得ないほどの負け方をしてしまいました。
私はイントレピッド社が相当の戦略をもって今回の債権者集会に臨んでいると考えていました。特に日本という非常に特殊な商習慣がある国に於いて二大航空会社を相手にデルタを率いて戦うのであれば相当用意周到な作戦があったのだろうと思いましたが、ヘロヘロだったということでした。そういう意味では今回の判断はスカイマーク案に多くの賛同があったというより、イントレピッド社の自滅ということかと思います。(今回の本当の勝者は全日空とのディールをしたエアバスだった気もしますが。)
以前にも何度かこのトピックスを取り上げさせていただいておりますが、個人的にはイントレピッド案を通じてデルタ航空に参入させるのが真の意味での第三極として風穴を開けるには良かったのですが、もう当分、このような機会は来ないのでしょう。国交省の役人もさぞかし安どしていることかと思います。
スカイマークに対して全日空が今後、経営に手を貸そうが、貸すまいがこの会社は割とすんなりと離陸できるとみています。なぜなら負債が極めて小さくなり、資産も減少することで償却費が減り、その結果、コストが大幅に削減できるからです。経理をやっている人には簡単に理解できる話ですが、特に航空会社の様に償却費が大きい資産を大量に保有する企業は倒産させることで資産を圧縮すればまず、再離陸は出来るものです。
会社の経営状態を見るにはいわゆる経常利益など損益計算書に出る数字を重視する場合とキャッシュフローを重視する方がよい場合があります。私の会社も所有不動産という資産の塊ですから、償却費が大きくなり、利益圧迫体質になりやすいのですが、キャッシュフローは大きくなります。またその反対側の負債が誰からの負債か、あるいは資本なのかによってこの企業価値判断は大きく変わるのです。
いずれにせよ、スカイマークはJAL再生と同様のスタートを切ることになります。JALには稲盛和夫氏が社員のマインドまで変える努力をしましたが、今後、スカイに必要なのは会社を引っ張るけん引役でしょう。今回の再生劇はほとんどがマネーばかりの話で経営体質の改善についてはほとんど触れることはありませんでした。
同社をリードしていたのが西久保愼一氏という一種のカリスマ的存在の方だったこともあり、社内に明白なポリシーをもって引っ張る人材が払底している可能性が高い気がします。よって、インテグラと全日空として一つだけ手を差し伸べなくてはいけなかったのが誰かしっかりしたプロの経営者の選任だったはずです。社長就任予定の日本政策投資銀行の元常務の市江正彦氏の手腕は分かりませんが、この会社には着いた色を変えるぐらいの強力なリーダーシップが必要だと感じます。
スカイは路線もリストラしたわけですから、あとは経営体質だけが残っています。一部の社員は倒産会社という負い目を持っていることでしょう。私も倒産会社にいましたのでその暗く、否定的な雰囲気は良く知っています。それを打破させることがスカイをより高く飛ばすまずは第一歩になります。
もう一つ、価格戦略について第三極というより中規模企業として大手二社にできない小回りな経営と営業をすべきでしょう。大手に追いつき追い越すというスタイルではなく、例えばメガバンクとりそな銀行のような関係、つまりニッチなところに自分をうまく置くということではないでしょうか?
スカイマークが第三極として独立性を保ちながら日航、全日空と戦う姿が本当に実現するのか私にはまだまだ巨大な疑問符が残ります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 8月6日付より