ギャンブルの合法化は少しずつ進んでいるが、大麻や売春の合法化は議論にもならない。しかしアムネスティは性的労働者の人権擁護のためには、売春を合法化して規制したほうがよいという見解を発表した。
この結論に到達するまでにアムネスティは2年間議論し、世界の実態調査を行なった。すでにスウェーデンやオランダなどで売春は合法化されており、その結果、犯罪や性病が減ったという。WHOやILOなどの国際機関も売春を「非犯罪化」して公的に管理することを勧告している。
これまで売春は人身売買と結びつけられてきたが、アムネスティの調査では、先進国の性的労働者に人身売買はみられない。人身売買が大量に行なわれているのはアフリカなどの最貧国で、そこでは売春よりもっと苛酷な強制労働のほうがはるかに多い。売春を禁止することによって人身売買を減らす効果はない。
もちろん売春は、望ましい職業ではない。吉原の遊女は年季奉公(期限つきの人身売買)で売られてくることが多かったが、年季が明けるまでに性病で死ぬことが多かった。吉原の周囲には深い堀がはりめぐらされ、大火のときは多くの遊女がそこに身を投げて死んだ。
しかし性病のリスクは、公的に規制して衛生管理をすれば防ぐことができる。このため戦前は、娼婦はひとひとり保健所に登録して公娼として性病の検査を定期的に義務づけられていた。これを戦地でもやったのが慰安婦である。
売春を悪とみなすのはキリスト教の文化で、日本では伝統的にそういう職業観はなかった。1956年に売春防止法ができるまで売春は合法であり、今でもなかば公然と行なわれている。これを非合法に行なうことは暴力団の資金源になるばかりでなく、健康リスクを増大させる。
「女性の人権」を根拠に売春の禁止を求めるのは逆である。いくら禁止しても、人類最古の職業は地下経済化し、危険になるだけだ。日本でも、女性議員からWHOやILOの勧告にそった提言が出てもいいのではないか。