日本の6月のインフレ率は0.4%。3月ぐらいまでは2%越えだったのが4月にすとんと落とし、その後も低迷しています。月額で見ると6月は-0.2%となり、下落がより鮮明になっています。しかし、このディスインフレ現象は日本だけではなく、主要国はほとんどが1%以下でスイスでは7月度に-1.3%と更に低下するなどデフレが深刻化しています。
消費者物価指数の計算は日常の生活に必要なモノやサービスをバスケットに入れてそこで計算されます。以前は価格下落率の大きかったテレビやパソコンがインフレ率の計算に大いに影響し、デフレの一因とされていました。品目は5年ごとに見直され、やかんやカセットテープなど時代のニーズに合わないものは既に除外されています。サービスでは理髪店や旅行、各種入場料のように広く一般に使われるアイテムがあります。
このインフレ率はどちらかというとモノの価格が主役であって、第二次産業が生み出す価格がキーであろうかと思います。ところが日本を含めた成熟国では昔の様にモノを次々買い替える人は少なくなっています。5年ぐらい前迄はパソコンを2年に一度は買い換えるという人が結構いました。今は少ないのではないでしょうか?理由はパソコンからタブレットやスマホへ主流が変わったこともありますが、パソコンの性能がもはや、一般の人が使うには十分に安定しているからであります。
物価計算の弱点の一つは各アイテムは代表的品目一つの価格変化なのであります。例えばウィスキーはし好品の代表例ですが、仮に指標で使っているのが国産某有名銘柄ウィスキーだとしても実際にはもっと高いスコッチを飲んでいるケースは反映されません。ハンドバックは国産と輸入品の2アイテムしかないし、腕時計は1アイテムです。男性の腕時計は時計というより唯一の身に着けられる貴金属である発想を反映しているとは思えません。
また、持ち家の計算では支払いローンの負担が反映されていない気がします。また金融サービスというアイテムもありません。(間違っていたらご指摘ください。)仮にそうだとすれば金利安で無理にローンを組んで住宅を購入したことによる消費力の減退分は反映できないということになります。
このようにモノの価値が成熟し安定してくると人々の消費行動は変わってくるでしょう。そこがインフレ率の計算にどこまで反映されているのか、ここがよくわからないのであります。
では成熟した国の消費行動が今後10年で更にどう変化していくか、でありますが、ライフスタイルの先進国、北米を眺めている限り、「メリハリ」がキーワードになりそうです。外食が友人やお客さんとの社交には欠かせないアイテムであるのはサーバーという面倒を見てくれる人が常に気配りをして2時間なりの食事を通したエンタテイメントを演出してくれるからです。
ところが外食が非常に高くなってきたと同時に必ずしも価格見合いのサービスを受けられないこともしばしばであります。ラーメンブームは世界中に広がっていますが、外国で食べるラーメン一杯千数百円を安いと思うかといえば日本人は高いと思い、外国人は他に作る方法がないからそれでも安いと思うはずです。私は生めんを買ってきて自分で家で作った方がうまいと思っています。
数年前、日本食に飢えていた学生にある指南をしました。安く食生活をたしなむキーは小麦粉にあり、であります。特に簡単なのがうどんでこれはあと塩と水だけで打てます。麺棒なんか必要ありません。ワインのボトルで代用すればよいのです。これがどれだけうまくて喜ばれたか。私がクックパッドをよく参照にしているのは外食メニューにない面白いものが作れるからであります。つまり、お金なんか使うよりもっと楽しむことが出来るライフがこれからのスタイルのような気がします。
日経電子版に500円のピザ登場、とありますがもともと日本のピザが高すぎただけです。これも小麦粉ビジネスですが家でピザを一度でも作れば買ってくるのがいかに馬鹿馬鹿しいかすぐに判別できるでしょう。
人々の生活が低インフレ率あるいはマイナスのインフレ率の下でも楽にならないのは収入が減ったこともありますが、インフレ率の定義、計算方法、嗜好品や消費性向のばらつき、こだわりが反映されておらず、世の中の流れについて行っていないのではないか、そんな気がします。
折しも安倍首相と黒田総裁が近々会談するのではないか、と報道されていますが、表面の数字だけを捉えてああでもない、こうでもないと論じる前にこの数字がどういう組成でどこかに指標として使うのに何か隠されたものはないのか、ここを先に検討し直すことも必要ではないかという気がします。
私ならさしずめ、VISAカードとかSUICAの消費傾向をビックデータとして分析して加工した指数を作ったほうがより実態を反映すると思いますが。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月17日付より