中国政府は、来月やる「抗日戦争勝利70周年」の軍事パレードに、韓国の朴槿恵大統領を招待していますが、彼女はまだ参加するかどうか決めかねているようです。それはそうでしょう。韓国人は、「抗日戦争」で中国を侵略した日本軍の側だったからです。
日中戦争には(朴大統領のお父さんを含めて)24万人の朝鮮人が志願兵として参加し、そのうち2万人あまりの死者が靖国神社にまつられています。朴大統領は中国に行って「われわれの先祖が中国を侵略したことは申し訳ない」とおわびでもするんでしょうか。
それより現実的なリスクが、韓国にはあります。北朝鮮の政権はいつ崩壊するかわからない状態で、そのとき「第2次朝鮮戦争」が起こる可能性もあります。1950年代の朝鮮戦争で韓国人を数十万人殺したのは、中国なのです。
中国が圧倒的な軍事的優位を背景にして、香港のような形で朝鮮半島を支配する可能性もあります。19世紀まで朝鮮半島は500年間、中国の支配下に置かれていたので、同じ儒教国として文化的な親和性は高いでしょう。
冷戦時代の「資本主義と社会主義」という対立はもう過去のものです。中国も経済は資本主義なので、韓国とあまり変わりません。それよりも大きな問題は、国際秩序についての考え方の違いです。
ヨーロッパやアメリカでは、何百年も戦争を繰り返した末に、戦争は(理由を問わず)すべて違法だというルールをつくりましたが、日本は1930年代にそれを壊して自滅しました。安倍首相が8月14日の談話で、日本が「国際秩序への挑戦者となってしまった」と反省したのは、そういう意味です。
中国の国際秩序についての考え方は、そういう西洋的なルールとはちがい、中国が世界の中心で他の国はそれにしたがう冊封秩序というものです。いまだに「歴史問題」で日本に謝罪を求めているように、正しい国が悪い国を征服する戦争は正しいと考えています。この点も韓国と似ています。
だから朴槿恵大統領が考えるべきなのは、慰安婦問題などという昔話ではなく、これから中国の脅威をどうするかという問題です。その際、アメリカの支援は不可欠です。1950年にアメリカの国務長官が「アメリカの防衛ラインは日本までだ」と発言して韓国を除外したことが、北朝鮮が開戦する原因になったといわれています。
韓国が中国に接近してアメリカとの関係をこじらせると、東アジアの情勢は不安定になり、その影響は日本にも及びます。朝鮮半島の「有事」を抑止する米軍の活動を集団的自衛権で支援することは、日本のためでもあるのです。