「安保反対」って何?

山口二郎さん(法政大学教授)が、きのう安保法案反対のアジ演説で「安倍にいいたい。お前は人間じゃない。たたき斬ってやる!」と絶叫しました。「たたき斬ってやる」は2回も出てきますが、彼は戦争には反対でも殺人には賛成のようです。

よい子のみなさんの生まれるはるか前の1960年にも、安保反対運動というのがありました。これは1952年に発効した日米安保条約が、アメリカが日本のどこに基地を置いてもいいけど日本を防衛する義務がない不平等条約だったので、それを改正しようというものでしたが、なぜか条約改正に反対する運動が盛り上がったのです。

その理由はよくわかりませんが、当時の全学連の幹部だった西部邁さんは「安保条約の中身は知らなかった。条文を読んだことがないから」といっています。彼らは条約を改正すると「日本がアメリカの戦争に巻き込まれる」といっていましたが、これは逆ですね。日本が攻撃されたとき、アメリカに守ってもらうことが目的だったんですから。

ところが1960年の5月19日に衆議院で、野党が欠席のまま条約改正案が可決されたため、「強行採決だ」といって学生のデモ隊が国会に押し寄せました。これも前にこども版で書いたように、野党が欠席したとき他の議案と一緒に可決されただけで、別に「強行」したわけではありません。野党が出席しても結果は同じでした。

ところがこれをきっかけにして、30万人とも100万人ともいわれる学生が国会を包囲し、その一部が国会の構内に乱入して、東大生の樺美智子さんが押しつぶされて死にました。これは学生が将棋倒しになったことが原因なので、責任はデモ隊にあったのですが、これをきっかけに「民主主義を守れ」という運動が盛り上がりました。

条約は衆議院で可決されれば参議院の議決は必要ないので、6月に自然成立しました。今度の安保法案も、参議院で採決しなくても、60日たてば衆議院で2/3の賛成があれば可決できるので、9月末までの会期中に成立するのは確実です。あのデモ隊は何をしようとしてるんでしょうか?

全学連の理論的指導者だった青木昌彦さんは「われわれは日帝が米帝から自立したと考えていたので、安保反対なんて理論的にはナンセンスだった」と回想しています。「でもアンポハンターイといえば何十万人も集まるので、このエネルギーを革命に結びつけようと思った」。

その青木さんも西部さんも挫折して「近経」に転向しましたが、彼らの指導した一般学生はその後もブントとか中核とか革マルとかいろいろな党派にわかれ、1968年の全共闘運動のころはまたあばれました。でもこの運動も、何が目的かわからないので挫折しました。

今回のデモは1日数千人で、60年安保の大規模なデモに比べると学芸会みたいなものですが、全共闘世代の山口さんは昔を思い出してなつかしかったんでしょう。でもよい子のみなさんは「たたき斬ってやる」などといってはいけません。これは脅迫という犯罪なので、普通の人が街頭でいったら警察につかまります。