「第三極」は必要か

民事再生手続中のスカイマークは一昨日、先月末に「同社の再生計画の認可決定が確定したと発表し(中略)今後は9月29日に100%減資を行った後にスポンサーによる増資を受け、新株主のもとで実施する臨時株主総会で6人の取締役を選任する」と報じられています。


新体制では、7年半程前に対談させて頂いたインテグラル代表の佐山展生さんが会長として「経営戦略を統括」され、また「日本政策投資銀行の元取締役、市江正彦氏が社長」として「具体的な方向付け」をされ行くようです。

日本の航空業界を過去より振り返ってみるに、そもそもが資本主義における公正なる競争の結果10年1月に日本航空(以下、JAL)が潰れたわけですが、時の政府は国民の血税を大量に費やさねばならない決着の仕方で、その破綻企業JALの再生を試みて今や両社の立場が逆転してしまいました。

事実、全日本空輸(以下、ANA)が先々月「29日に発表した15年4~6月期連結決算。経常利益が159億円と過去最高を更新した(中略)が翌日に日航が発表した同じ期の連結経常利益は392億円と、ANAをあっさり抜き去った(中略)。15年4~6月期の売上高営業利益率は日航の11.6%に対し、ANAは4.0%」といった具合です。

此の両社間には今も残るJALの「経営破綻後の財産評定による利益押し上げ効果(中略)だけでは説明できない収益力の差が存在する」と評する向きもありますが、本来潰れておらねばならないJALの方が業績的にベターな現況は、やはり可笑しいと言わざるを得ないでしょう。

本年1月経営破綻したスカイマークを巡って、国土交通省が今回如何なる形で関与したのかは産経新聞記事『航空行政のあり方問うた「スカイ劇場」』(15年8月5日)にも書かれていますが、ANAはJALのケースを経て大変な競争上の不利益を被ったわけですから、現下の競争環境を少しでも公平にすべく、今度はそのANAに恩典を与えたということなのかもしれません。

私は5年前の『日本の航空事業の未来』というブログで、そもそも此の狭い「日本にANAとJALという航空会社2社を残す必要は無」いと述べた上で、JALの問題が表面化した「初期の段階から根本的に誤った方向で進められていることが元凶であり、一国一キャリア体制を敷くことこそが、世界規模で熾烈な生存競争が繰り広げられている航空ビジネスにおいて何とか生き残るための唯一の術であった」と書きました。

ANAは資本主義的な競争世界で公正な戦いに勝ち生き残って行くという意味でそれが最良の体制であったと考え、JALを潰すべきだと思っていたのです。結局JALの場合は会社更生法で処理されて株式が100%減資され、長期債務と社債が87.5%カットされ、産業再生機構が9000億円の国費を投入し生き残したというわけです。

『スカイマークは日本航空、ANAに続く「第三極」の航空会社として約20年前に誕生した。ドル箱路線とされる羽田空港の発着枠を優先的に配分された同社は、運賃引き下げやサービス向上などを通じ、航空自由化の中で一定の存在感を示してきたといえよう。同社が破綻したのは、国際線参入を目指して大型機を大量発注するなど、無謀な拡大策に走ったことが直接の原因だ』とは先月10日、産経社説の指摘であります。シビアではありますが頓珍漢な経営が為されたが故、潰れてしまったということでしょう。

今回の件に関し先月掲載の「5大紙」社説タイトルを見ますと、「スカイマーク 空の寡占化が心配だ」(毎日新聞)とか「スカイマーク再生と空の競争」(日経新聞)とかと、「1990年代以降進めてきた航空自由化は頓挫、空の競争は停滞する懸念がある」といった論調でした。ただ考えてみるに此の航空業界では資本主義における公正なる競争の結果、一国内で「独占」状態が生じたとして如何かという性質のものではないと私は思います。

何故ならそれはグローバルで競争圧力に晒されているものであり、世界の多くのキャリアとの過酷な競争に向き合っているのですから、競争の確保を懸念するとかANAが強くなり過ぎたら云々といった類は愚かな指摘に感じられます。大体日本のどの業界を見てみても一つの業界に会社数が多過ぎるという問題があって、業界内の競合が激化し結局どこも収益性が上がらない体質になっているのが実態です。之は世界的な同業界でのROE、その他の収益性の指標を見ても明らかです。

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