欧州で難民流入問題が大きな課題として浮上してきました。特に9月2日にギリシャの島で難民として逃れようとした幼児の遺体が見つかったことで一気に欧州全体の社会問題として火が付き、全世界も注目する事態となりました。ここバンクーバーでもその子供を抱き上げている写真を紙面の半分ほどの大きさで掲載していました。
難民。日本ではあまり縁がない言葉で遠い国の話の様に思えます。ただ、歴史を紐解くと朝鮮半島で百済がほろんだ際、日本に難民がきた記録があるそうで、数こそ少ないのですが、それなりの歴史はあるようです。ただし、ウィキペディアによると近年、日本の難民申請は急増しており、2005年の384人が2014年には5000人にもなったそうです。そのうち、認められたのはわずか11名とのことで日本の難民に対するハードルは異様に高く、国際社会からは批判も出ているようです。但し、難民申請には単に稼ぎたいというウソの申請も多いとのことです。
さて、話を戻しましょう。EUでは労働の移動の自由があり、圏内に入ってしまえば有利になります。その圏内入りをするもっとも入りやすい入口がギリシャでありました。特に東部のコス島経由の難民が急増し、当地の新聞でも大きく取り上げられています。また、最近ではハンガリーのブタペストあたりから鉄道でドイツを目指す向きも多く、駅は難民で溢れかえっているともされています。その数、一日3000人とも言われていますので半端な数ではありません。また、今年に入ってからの欧州への難民申請は200万を超え、昨年の倍の水準だそうです。
欧州は北米と違い、ニューブラッドを受け入れる壁が高いとされています。また、民族意識が非常に強いことも特徴です。その中で今回の難民の多くはシリア、イラク、アフガニスタンなど戦禍に見舞われた地域からであり、且つ、イスラム教徒が多いことに特徴があります。イスラムの教えからは平等主義が非常に強く、助け合いの精神はキリスト教とは違ったレベルで人と人の繋がりを求め続けています。
欧州に向かう難民の多くはドイツに向かっているとされますが、一般には欧州全域にわたり、イギリスも含まれます。確か、ドーバー海峡の鉄道線路を伝ってイギリスに向かうなどという報道もありました。
これは欧州にとって非常に頭の痛い問題となります。人道的にはある程度の受け入れは必要になるのでしょうが、一定数を超えることは国内経済、治安、社会など様々な問題を引き起こします。とはいえ、数で線引きした場合、残りの難民はどうするのか、という話にもなります。これが欧州レベルを超えて、地球レベルにでもなればそれこそ、先進国に割り当てぐらいの発想が出ないとも限りません。
国家とは政策を通じて少しずつ国民の富と平和を実現する努力を長年続けた形であります。先進国とはある一定のレベルに達した国であるともいえます。それは国民が長年努力し、我慢し、苦労した結果、築き上げた成果なのです。勿論、それを独り占めする発想は毛頭ありませんが、突然、難民が押し寄せ、その国家の富やバランスが崩れるような状態になることは正に動乱であります。
今、起きようとしているのはこのバランスを崩す可能性すらあるということです。厳しい戦禍の中にいる人は誰一人そこに留まりたいと思わないでしょう。暖かいスープとパンと毛布があり、家族が絆を作れる世界があればそこを目指すのは道理であり、イスラムでは特に強く表れます。
ただ、それが原因で国家の経済や社会が転覆したら本末転倒であります。
日本は島国で遠い国の話に聞こえるでしょう。では、仮に北朝鮮が崩壊した場合、どうなるか、という想定では相当数の難民が出ると見込まれています。それを誰が吸収するか、といえば韓国だけでは無理で中国も一定数が限度。そのため、日本も相当数、受け入れるのではないか、というストーリーを以前、どこかで読んだことがあります。その時、近代日本に於いて、降ってわいたような話で大騒ぎになることは目に見えています。
朝鮮半島外交に於いて国際的には日本は北朝鮮に優しいとされています。優しい理由は賢い官僚がそこを見越している可能性はあります。つまり崩壊されると日本にとんでもない影響がある、ということが頭にあるのかもしれません。(思い出してください。北朝鮮のあの東京の本部だっていつの間にかちゃんと復活、存続していますね。)
私は世界レベルで「民主主義」が非常に強調されてきたのがこの10年だと思っています。民主主義では平等の原則が強く押し出され、その解釈の中で「幸福になる権利」のようなものを感じます。しかも難民問題とはその幸福になる人権を国境という仕切りを超えた物差しで考えるということであります。
ドナルドトランプ風に言えば、「努力しないものはパンにもスープにもありつけない」ということになるはずですが、そんな簡単なモンギリ調で解決できるとは思えません。正直、これは先進国、特に欧州にとって非常に重く、困難な問題に立ち向かうことになると思います。これから長く続くテーマとなりそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 9月7日付より