国会のまわりは、昔は反原発の人でにぎわっていました。このごろは反安保法案のデモになったようですが、上の写真のように反原発デモに似てますね。参加しているのも同じような人々です。
しかしこの二つは、考え方が逆です。反原発派の人は、原発は100%安全だという考え方を「安全神話」と批判していたのですが、反安保派の人は日本が軍事力をもたなくても100%安全だと信じているようです。なぜこういう矛盾した発想が出てくるんでしょうか?
それはこういうデモをする文系の学生が期待値という考え方を知らないためでしょう。理系の人は
期待値=確率変数×確率
という公式をいつも使います。期待値というのは予想される結果で、確率変数というのは1回の出来事の大きさです。たとえば「自分の100円玉を投げて表が出たら相手から100円もらえるが、裏が出たら100円玉は相手に取られる」という賭けでは、確率変数は100+100=200ですが、表が出る確率は0.5なので、
期待値=200×0.5=100
というように確率をかけて考えると、この賭けは得にも損にもなりません。こういう考え方は理系では当たり前で、統計力学や量子力学で確率を知らないと何もできません。原発や戦争のリスクも期待値なので、確率をかけて考えないといけないのです。
でも文系の人は高校でも確率を教わらない人が多いので、「表か裏か」という結果だけを考えます。結果はつねにどちらか100%ですから、自分の思う出来事は100%起こると考えやすいのです。京都大学の調査でも、文系に反原発の人が多いという傾向がみられるようです。彼らの脳内では、確率がこんなふうに分布してるんでしょう。
- 原発を再稼動したら事故が起こって多くの人が死ぬ確率:100%
- 活断層が大地震を起こして原発を破壊する確率:100%
- 集団的自衛権で戦争に巻き込まれる確率:100%
- 東アジアで軍事衝突が起こる確率:0%
この確率が正しいとすると、反原発=反安保派の人々の話は正しいのですが、それは本当でしょうか?
- 大規模な原発事故が起こったのは、50年の歴史の中で3回(スリーマイルとチェルノブイリと福島第一)、そのうち死者が出たのはチェルノブイリだけです。
- 10万年以内に動いた活断層は日本中に2000以上ありますが、それが原発事故を起こしたことはありません。東日本大震災は、プレートの動いた巨大地震です。
- 集団的自衛権というのは権利なので、もしアメリカが日本に関係のない戦争に参加してくれといっても、日本は拒否できます。
- 東アジアで大規模な戦争が起こることは考えにくいが、軍事衝突が起こる確率はゼロとはいえません。先日も北朝鮮が韓国を攻撃すると脅したばかりです。少なくとも原発事故の確率より高いでしょう。
このように普通は、確率は100%でも0%でもないのです。もちろん正確に何%と予言することはできないので、人によって幅はありますが、今までの経験からだいたいのことはいえるので、最悪の場合にそなえる必要があります。
これは個人ではできないので、政府の仕事です。戦争の起こる確率は低いけれど、起こったら大変なことになります。隣の中国が派手なパレードで軍備拡大を宣伝しているとき、日本が「仲よくしましょう」というだけで平和を守ることはできません。それにそなえることが憲法に違反するというなら、憲法を改正すればいいのです。