米中首脳会議の行方

習近平国家主席がアメリカ入りしています。現在シアトルで主にビジネスを中心とした日程をこなしていますが、24日にワシントン入りし、いよいよ政治的日程に入っていきます。昨今の中国を取り巻く案件は非常に多く、今回の米中首脳会議でどのように議論され、落としどころを見つけていくのか注目されます。

シアトルではボーイング社とのディールが目につきました。同社から300機購入すると同時に中国に合弁で工場を作ることを決めるなど相変わらずスケールの大きな取引が目立ちます。政治的交渉の前に習近平国家主席自ら爆買いを進めることで交渉をしやすくする効果は多少なりともあるでしょう。

案件は山積しています。南シナ海の埋め立て問題、サイバー攻撃問題、人権問題、経済や為替、株式問題、在米の汚職官僚引き渡し問題、AIIBなどなど相当の時間とエネルギーを費やさないと一定の成果は出ないものばかりです。しかし、これら問題を事前に中国で調整してきたのはライス大統領補佐官であります。彼女はどちらかというと中国にひいき目な感じがあり、これも会談の流れをある程度色付けするのではないでしょうか?

習近平国家主席の性格や今の立場を考えればアメリカと各種問題でそう簡単に合意するとは思えません。もともと強気な論調が目立ち、折衷なり、軌道修正をあまりしてこないタイプですからオバマ大統領がどう議論を吹っかけても平行線で終わるような気がします。むしろ、レームダックのオバマ大統領としては「言いたいことは言った」ぐらいの「成果」しか上げられない可能性が高いのではないでしょうか?

一方の習近平国家主席が期待するアメリカ訪問の成果ですが、一義的には「存在感」でありましょう。アメリカ人の好き嫌いにかかわらず、中国の存在は政治、経済、社会に強く影響するということをアピールすることだろうと思います。折しもサンフランシスコで慰安婦像建立が決定しましたが、先日の公聴会の様子をビデオで見ていても韓国側のパワーではなく中華系の力で圧倒したという感じがいたしました。中国系の市長は人権を盾に初めから建立ありき、のトーンがありありと見えていました。(ならばサンフランシスコに中国の人権問題をテーマにする像を建立するプランを立てたらどうなるのか、と思いましたが。)

昨今の上海株式市場での騒動が世界に波及したことは中国からすれば「ほら見ろ、中国の世界に与える影響は果てしなく大きい。だからこそ、世界は中国の存在を改めて認識するはずだ」ぐらいの議論展開は平気でしてくるでしょう。既に欧州やオーストラリアは経済的便益から中国サマサマであり、足を向けて寝られないでしょう。ですが、これでは世界のパワーバランスが崩れてしまいます。

地球上の人口70億に対して中国の13億人は確かに大きいですが、全体の18%しか占めないという見方もできます。18%のバランスで考えれば、一国としての人口が大きく共産党一党体制を敷く中国であっても中華思想に基づく拡張主義で好き勝手にしてよい理由はないのであります。経済的には確かに過去10数年、中国の存在は大きく、グローバル化の流れの中で大きな役割を果たしました。しかし、一人っ子政策の歪、更には都市部での少子化はこの国の最大のテーマであり、人件費が上がる中国がかつてのサクセスストーリーを延々と描くことはできないでしょう。

アメリカに期待するのはこの拡大主義をどう抑え、世界の道徳観をシェアできるように説くことでしょう。すぐさまの効果は期待していませんが、世の中は必ず変化するという前提に立てば中国のモザイクは他の国のモザイクと同様同じ大きさであるべきではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 9月24日付より