兵庫県明石市の「手話言語・障害者コミュニケーション条例」とは

こんにちは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
兵庫県明石市への視察の続きです。


前編:実は日本には言語が2つある。日本語と、もう一つは…◯◯?!
http://otokitashun.com/blog/daily/8761/

前回の記事の中で長々と、

・手話は言語であること
・歴史上、手話は虐げられ、習得の機会と文化を奪われてきたこと
・近年になって見直しが始まり、2011年には法文の中に明記されたこと
・引き続き「手話言語法」「手話言語条例」の制定がろう者たちの悲願になっていること

などを説明させていただきました。

政治の世界での機微として、なかなか国政でドラスティックに進めることが難しい課題については、地方政治の場で実現が進むというケースがあるのですが、まさにいま全国の自治体で検討されている「手話言語条例」はその一つといえます。

しかしその制定に当たっては、様々な困難や議論に直面します。
その最も大きな争点の一つとなるのが、

「コミュニケーションで困っているのは、ろう者だけではない」
「中途失聴者の字幕保障や盲者の点字など様々な手段があるのに、どうして手話だけ?

というものです。
また

「聴覚障がい者・手話者の中でも『日本手話』を使うネイティブはごくわずか。その極めて少数のために、労力をかけて条例までつくるのはいかがなものか」

というストレートな批判もあります。
実際、手話を「言語」として使う方々がどれだけの人数いるのか、正確な統計は自治体も政府も持っていないというのが現状といえます。

こうした課題を非常に上手い形で解決したのが、兵庫県明石市の通称

「手話言語・障害者コミュニケーション条例」
https://www.city.akashi.lg.jp/fukushi/fu_soumu_ka/syuwa/jyoreisakutei.html

です。

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前述の「どうして手話だけ」という批判に対して、要約筆記・点字・音訳などの普及促進も併記して条例化したものになります。

当事者間の調整が非常に難しかったと思われるこの条例の制定過程について、トータルで携わった担当者の方からじっくりとお話を伺いました。

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やはりいちばん難しかったことの一つは、手話言語条例の制定に強い意欲を示していたろう者・当事者の方々への説明。
当初は

「手話は言語であるが、その他のコミュニケーション方法は手段ではないか」
「その異なる2つを、1つの条例にするという意味がわからない」

と非常に頑なな態度を取られており、何度も何度も足を運んで

「1つの条例ではあるが、きちんと章で分けて別に明示する」
「同じ障がい者という立場で、現状を一緒に改善していくことも重要」

という趣旨を説明したとのこと。
その際には、手話者として初の議員となった元明石市議の家根谷氏が条例案に強く理解を示し、当事者たちとの調整の架け橋となったそうです。

また、一方の中途失聴・難聴者や他の障がい者関係団体は、それほどこの両論併記ともいえる条例案に対して抵抗を感じることもなく、スムーズに理解をしていただけたのが幸運だったともおっしゃっていました。

様々な政策を進めていく中で

「当事者の声を聴いて欲しい」

という意見は多く届きますが、『当事者』にも様々な立場があり、その関係者間の調整が政治・行政が担う最も困難な作業と言えます。

そんな中で、調整困難を承知の上で手話言語条例にその他の障害者コミュニケーションを含める決断をし、その当事者間調整を成し遂げた明石市は非常に素晴らしい実績を残したといえます。

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行政からのヒアリングの後には、条例制定の立役者であり、現在は市議会議員として障害者政策を推し進める家屋谷議員ともご挨拶・意見交換をすることができました(その内容はまたいずれ)。

東京都はかつて、教育特区申請により都内に日本で初めて、日本語と手話のバイリンガル教育を行うろう教育学校を設立した自治体ですが、現状ではすでに条例を制定した神奈川県・鳥取県の後塵を拝しています。

パラリンピックを迎える東京都においても、手話だけでなく障害者すべてのコミュニケーション手段を内包する条例制定し、そして更なる情報バリアフリー環境の整備を促進していくべきではないでしょうか。

明石市で得てきた知見を活かしながら、早速本定例会で提案をしていきたいと思います。

それでは、また明日。

おときた駿 プロフィール
東京都議会議員(北区選出)/北区出身 31歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、地方議員トップブロガーとして活動中。

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