ドイツのさらに一歩先を行く、オランダの社会的養護事情

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
オランダ視察2日目の今日は朝から晩まで盛り沢山だったのですが、本日はわたくし&都政に関連する児童養護・里親支援を中心にご報告します。


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視察を受け入れてくれたのは福祉事業団体「jeugdformaat」。
英語でいうとユースフォーマットで、民間の立場で行政と連携して里親支援の実務を担っている団体です。

欧州のほとんどはそうですが、オランダは特に行政が民間に委託する事業が多く、彼らが里親支援に関する実務や児童と里親のマッチング、里親候補者の発掘などを一手に担って行っているようで、国内には類似の団体も複数存在するとのこと。

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ドイツの福祉事業団の方に、

「オランダは私達よりも一歩先を行っている。ぜひ色々聞いてみて下さい」

と言われたのですが、オランダの児童養護の特徴として、何より家庭内支援・家族再統合に力点を置いていることが挙げられます。

オランダもすでにドイツ同様、ある時期を境に施設から里親への転換が行われ、乳児院は廃止・12歳以下の子どもは施設に入れないというルールが確立されました。

これにより施設は激減し、家庭養護が増えてきたわけですが、今度は「里親の数をいかに減らすか」という議論が行われています。

どういうことかと言うと、お話を聞いた団体も里親支援をメインに行う団体ですが、それでも色々とやってきた結果、やはり子どもは自分の家庭・家族で育つことが一番だと。
(私たちも失業したいわけではないが…と冗談めかして言っていました)

「もうこれは無理だ…親から引き離して、社会的養護をするしかない!」

とこれまで諦めてきたケースであっても、何らかの方法はある。
保護者の薬物依存、経済的困窮、児童虐待…さまざまな課題に立ち向かいながらオランダは現在、他国であれば不可能と考える事例でも「家庭内支援・家族再統合」に取り組みます。

そのためには何より早期の発見・介入と、専門家による手厚い支援。
現在は他国でも

「ホームスタート」

という名称で少しずつ知られるようになってきましたが、困難な子育てを社会・地域・専門家の全員でサポートする仕組みづくりを人的資源・財源を投入して積極的に行ってるそうです。

あまりこの凄さが伝えられなくて申し訳ないのですが、これは非常にドラスティックな発想の転換です。日本の50年くらい先を行っています。

孤児院

施設養護

里親委託

家庭内支援・再統合

というプロセスを辿っているわけですね。
親元でいかに支援するか、引き離したとしてもいかに早く親元に返すか。

日本では現在、親の親権が強すぎるあまり、そこから緊急性のある子どもを迅速に引き離せ!という議論が行われています。

ドイツでは法整備の結果、1万件を超す児童たちが親権停止によって親から離され、里親の元で保護されることを実現しました。

しかし上記のようなプロセスを踏んだ上でなお、そのすべてを一周回ってオランダは

「やはり、最後まで家庭で養護する方法を考えるべき」

という結論に至りました。
もちろん家庭に帰れないケースだって多々あるわけですが、

「あくまで家庭外養護は、福祉の最終手段」

という彼らの確信に満ちた結論に、我々は学ぶものが多くあるのではないでしょうか。

施設養護よりも、家庭養護の方が良い。
家庭養護よりも、本当の家庭の方がなお良い。

当たり前のことだけれども、相当な歴史と場数、議論を経なければたどり着くことができない結論です。

他にも、里親と児童とのマッチングを進める上での留意点、州政府から基礎自治体へと児童養護の権限を移譲した改革、行政と民間との協力体制など、学ぶことが多々あったオランダの現状でした。

とても一度では説明しきれないため、また折をみて少しご紹介させていただければと思います。

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「給料なんて安いもの。それでも私たちは、自分の仕事に誇りを感じている」

そうキラキラと話をしてくれたポールさん、パトリックさん、本当にありがとうございました!日本にもその情熱が届けられるように頑張ります。

明日は安楽死関連の施設を見て、イギリスへと移動します。
それでは、また明日。