どうも新田です。5年前、「龍馬伝」に感化されて会社を脱藩して人生を棒に振りかけたのは私です。ところで、朝日新聞の誇った次世代最終兵器、デジタルイケメンの古田大輔記者がとうとう脱藩。開設準備中のバズフィード日本版に編集長としてヘッドハントされたそうです。1年半前に私が脱藩者が出てくるかを占う記事を書いた時よりも進展が早い、早い。NewsPicks界隈に巣食っているメディアニュース意識高い系の皆さんは、「佐々木さんが東洋経済を辞めて以来の衝撃だぜ」(by 金髪ジャーナリストのお兄さん)とばかりに早くもお祭り騒ぎのようですが、面白いのはその引き抜かれた朝日新聞デジタルが他人事のように報じていることです。
バズフィード日本版編集長に古田大輔氏 元朝日新聞記者
米国の新興人気ニュースサイト「バズフィード」は16日、今冬に開設する日本版編集長に、元朝日新聞記者の古田大輔氏(37)が就任したと発表した。バズフィードは2006年設立。サイトへの月間訪問者数は2億人を超え、米国では伝統的なメディアに並ぶ影響力を持ち始めている。日本版サイトは、バズフィードの米国本社と、日本最大の検索サイト「ヤフージャパン」を運営するヤフーが合弁で設立した日本法人が開設準備を進めている。
古田氏は02年に朝日新聞社に入社。バンコクやシンガポール駐在を経てデジタル編集部に勤務し、15日付で退社した。
なんとも生温かいものを感じさせる文面です。高額のヘッドハンティング報酬(想像)、ヤフージャパンと合弁という資本力とテクノロジーをバックに擁し、零細メディアを預かる身としては羨ましい限りですが、こういう記事が古巣から出るあたり、古田さんが円満退社したのはもちろん、むしろ快く送り出した人の方が多いと察します。ここ2年、デジタルブランディングに血眼になっている朝日サイドが、古田さんに成功してもらうことでメディア業界の新しいキャリアパスを自社から作り出す意義の方を重視する「大人ぶり」を示したともいえます(表向きは)。
まー、このあたりの寛容さ。
どこぞの新聞社のように都知事選の折に陣営代表者として私のコメントを取りにきながら、後になってデスクが「うちの会社にいた人間が紙面に出るのはいかがなものか」と意味不明な理由でボツにして他の人の談話に差し替えるような美しい愛社精神を発揮されるのとは、随分カルチャーギャップがございます。こっちも円満退社だったんですけどね。とほほ(泣)。もちろん、我が古巣からも脱藩して新興メディアの編集幹部に移籍する人が出てこないと、私も寂しい限りではございますので、デジタルとジャーナリズムの見識を兼備した古田さん並みの人が出てくることをダメ元で期待します。
一方、本件で注目したいのは産経でも毎日でもなく、やはり経営的にはなんだかんだ安定している方の朝日記者から大型移籍の事例が出たことです。隙あらば新興メディアに行きたいと画策していたであろう毎日のデジタル好きの記者さんたちは立つ瀬がなくなってしまいそうですが、バズフィードが古田さんの脇を固める記者・編集者を伝統メディアから雇い入れる説もあります。毎日の石戸君、就活頑張ってください。
ただですね、新聞業界随一の高給取りである朝日記者がリスクを取った挑戦をすることにインパクトはあるものの、今後のメディアの人材流動化につながるかというと微妙なところです。すでに新興メディアでは編集作業のプロセスにおいて、できるだけテクノロジーで人的コストを抑えようとしておりますし、「紙だけ」しか知らない人は論外なことはもちろん、所帯が小さいとビジネスリテラシーも要求されるので、ビジネスど素人の新聞記者よりは、多少はマーケット感覚の中で仕事をしている出版社勤務の方がまだ乗り換えやすそうです。
なお、「弁護士ドットコムの亀松編集長も朝日脱藩者だぞ」という指摘が聞こえてきそうですが、亀松さんはニコニコを挟んでいますので、事情が違います。私もPR会社を挟んでいるので純粋に読売からの新興メディア移籍ではなく、世間では全く話題になっておりません。このあたり、私が残念ながら古田さんほど若くイケメンではないことも影響していますね。これからも月見草を愛でながら日の当たらないところでコツコツとやってまいりますので、よろしくお願いいたします。
古田さん、頑張ってください。サービスローンチの折にでもぜひインタビュー取材させてください。退社した今だからこそ語っていただけることがあると思います。以上、メディア業界以外の方には全く関心がなくて、外資で働く人から「なんじゃこの流動性の無さは」とドン引きされ、PVが上がらない業界ネタでした。ではでは。
新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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