偽造問題は現代社会の病

岡本 裕明

横浜の傾いたマンション群を建て直す方向で検討していると報じられています。正直、その判断の早さに驚きましたが、販売、施工側はそうせざるを得ない情報を既に得ていた気もします。今後、想像を絶する費用負担と三井不動産(デベ)、三井住友建設(元請)、旭化成(二次下請け)の関係会社間(一次下請けの日立の関連会社はどうなるのでしょう。)のせめぎ合いも相当なものになるのだろうと思います。折しも届いた旭化成へーベルハウスのダイレクトメールになぜか空しい感じすら覚えます。

旭化成建材の現場社員が雨や泥で現場データの取得に失敗したことで偽装データを作成したとすればたった一人の社員の怠慢なり不作為な行動が全てのきっかけでありました。これだけの大事になるとは当の社員にとっては当然ながら想定外であったはずです。

この事件を通じて思うことは社員の責任感と忠誠心が会社の意向通りになっていないということですが、このような問題は日本のすべての会社に共通するリスクであります。これは日本の人事教育において最大の懸念すべき事項であり、その克服をどうすべきか、改めて考えなくてはいけません。

多くの企業は製品やサービスの安定化を図るため、ロボット化や機械化、マニュアルの強化や重層の報告、責任権限の明確化を敷いています。更には今後、AIといった人工知能が普及し、社員の判断を必要としなくなる方向に加速度を増していくのが世の中の動きです。日経ビジネスには手術もロボットが行う時代と題し、医師はモニター越しに手振りでロボットを動かすという記事が出ていましたが、その技術の進歩以上に人間の本来持つ能力が不要化していくわけです。

最近では車の自動運転のニュースが頻繁に出ています。各社2020年頃を実用化の目途としています。その後、この自動運転が本格普及した場合、何が起きるかといえば例えば、タクシーの運転手がいらなくなってしまいます。技術の進歩と共に様々な単純労働が世の中から消えていくのです。就労希望者にとって今までは職安に来る人たちがライバルでした。最近では海外の労働者もこの競争に参加しつつありますが、その上、更にロボット君やAI君たちとも戦わなくてはいけないことになります。

これは二極化とか格差とか言った問題どころではなく、生きるか死ぬか、ぐらいの話になってくるのです。

その為に親は子供に良い教育を施し、機械に使われるのではなく、機械を使うポジションにつかせようとするでしょう。しかし、全員がそのポジションをゲットできるわけではありません。「頭を使う上級職」から溢れるであろう人々をどうするのか、これが日本のみならず、20年後の世界最大の問題になるであろうことは想像に難くありません。

現代社会では人々は「機械に使われている」と言っても過言ではありません。パソコン画面を目の前に「入力が正しくありません」という表示にイライラすることはどんな人でも経験しています。結果、人間社会は機械との対話が主体となり、人間が本来持つ能力や知識、思考能力がどんどん錆びついてしまっています。

今回の偽装事件でも

データが取れない⇒やり直しできない⇒会社に怒られる⇒適当に繕う

のプロセスに於いてその場をしのぐという発想、会社やチームと対話をし胆力を持つ能力の欠如に繋がってしまいます。たまたまこの事件は規模が大きく、注目されましたがこのようなことはビジネスの世界では日常茶飯事でしょう。

現代人はいよいよ考えることをしなくなりました。一瞬の休みに条件反射の様にスマホを取り出し、ネットに繋がっていないと不安と感じるのは呼吸ができなくて苦しむようなもので現代病ともいって差し支えないでしょう。私は意図的にネットと切断する時間を頻繁に持っています。カナダの山の中で1-2時間ハイキングをしながら考える時間を作り、戸外で書に親しみ、仲間と時に熱く、時にたわいない話で盛り上がるそんな当たり前のメリハリが今の時代には案外重要だったりするのでしょう。(私は飲み会の際にスマホをチェックする人は次回から誘いません。その場に集中することが大事なんです。)

意図的に意識改革をしないとこのような問題はまた起きるし、問題はどんどん深みにはまっていくことになります。こんな社会でよいのでしょうか?

では、今日はこのあたりで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月17日付より