カナダの首相にハンサムでサラブレッドである弱冠43歳のジャスティン トルドー氏が就任します。それまでの右派の保守党から中道左派の自由党にバトンが移ったわけです。正直、映画俳優としてでも一流になれる素質を持っていそうな気がしますがカナダ国民は彼を国のリーダーとして選びました。
注目すべき点は下院の過半数を確保し、安定政権になること、前回2011年の時は自由党が屈辱的敗北を喫していたのに今回は保守党が議席数を166から99と67席も減らしてしまっています。これはとりもなおさず、国民の政治に対する期待と実態がなかなか合致しないということを意味します。
オーストラリアでも9月に首相が変わりましたが、経済が不振になる中で親日派のトニー アボット氏から親中派のマルコム ターンブル氏に代わっています。実はアボット氏の前の首相はケビン ラッド氏なのですが、白人の切れそうな顔つきながら流ちょうな北京語で政府関係者と中国語で直接やり取りするぐらいでありました。つまり、親中、親日、親中と交代しているとも言えそうです。
オーストラリアの場合、中国への経済依存度が非常に高く中国をいかに取り込むか、という点に於いて同国の生命線であるとも言える背景を映し出しているのかもしれません。
同じ論理はカナダにも言え、経済が2四半期連続でマイナス成長となり、リセッション入りをしている最中、国民からは経済対策が叫ばれていました。前任のハーパー首相が経済活性化に力を入れた記憶はあまりなく、難しいかじ取りの時期、それなりにやってきましたが国民はもう我慢できない、ということだったのでしょう。
マイナス面が目立ってしまうと人は変化を求めるのは世の常であり、日本でも民主党への政権交代が起きた基本的な背景でありました。アメリカに至っては相当頻繁に民主と共和が入れ替わっており、双方が刺激し合って国民からの賛同を得る為の果てしない努力と戦略を繰り返しています。
但し、世の中が成熟化するとどうしても中道左派的な政策が好まれるトレンドが生まれる気がします。それは格差問題に端を発し、中流が中流の地位を確保し続けるためには政治力を必要とする、ということでしょうか。アメリカの大統領選をみても世の流れは民主なのに今の大統領の手腕はふがいない状態です。アメリカ人はもう一度「チェンジ」を求めてみるものの共和にも踏み込めない迷いが見て取れます。これが結局、本命が存在しない混とんとしたレース展開の本質ではないでしょうか?
日本でも国民性からして民主の方が向いているとは思いますが、前回の酷い政権交代に国民は辟易としたというのが実情ではないでしょうか?ところが、安倍政権も出だしこそ良かったものの、ここにきて守りに入らざるを得ないほど厳しい評価となりつつあります。特に安倍首相が女性から不人気である点は今後の政局に黄色信号が灯りそうです。女性の支持率は38%に対して不支持は42%となり、男性と圧倒的差が生じているとのことです。(日経より)
国民の幸福要求度、満足欲求度は我儘で高いレベルの達成感を要求する、これが私の感じる先進国の政治と国民の期待の現状だと思います。その上、世の中は複雑になり、経済対策も大掛かりなものを仕掛けにくくなってきたことを考えれば、政治がどこまで広く薄く国民に好影響を与えることが出来るか、という課題は果てしなく難しいものになるのでしょう。
カナダでジャスティン トルドーを選んだカナダ国民の心理はせめて彼の笑顔で国を明るくしてもらいたいということなのかもしれません。
では今日はこのあたりで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月22日付より