不動産投資で大切な3つのものは「ロケーション、ロケーション、ロケーション」だとすれば、金融資産への投資で大切な3つのものは「コスト、コスト、コスト」となります。ところが、投資信託のコストに関して、日本全体では高コストという「ガラパゴス化」が進んでいることがわかりました。
グラフは、10月24日の日経電子版に掲載されていた田村編集委員の記事からの引用です。日米の投資信託の平均コストを、インデックス型と全体で比較した時系列データです。米国では全体にコスト低下の流れになっているに対し、日本では、インデックス型の投資信託は米国同様低下していますが、全体ではコストが上昇傾向にあることがわかります。
これは、20~40歳代の資産形成層に向けて、ネット証券経由の低コストインデックス型投資信託が投入され、積立で投資する「賢明な投資家」が増えている。その一方で、資産を豊富に保有するシニア層には、仕組みが複雑で高コストの投信が売れ続け、これが平均コストを引き上げていることが原因と推定できます。
米国だけではなく、ETF(上場投資信託)の登場によって、資産運用のコストは世界的に低下傾向にあります。さらに、機関投資家も高コストのヘッジファンドのような投資商品から低コストのインデックス運用へのシフトを急激に進めており、「低コストのインデックス運用」というのが世界の金融資産運用のトレンドなのです。
日本国内では、三井住友トラストアセットマネジメントや三菱UFJ国際投信が、この低コストインデックス運用の先駆者として、インデックスファンドをシリーズ化して残高を伸ばしてきました。そのほとんどはネット証券の積立サービスを使ってドルコスト平均法で資産を積み上げています。
そして最近、そのマーケットに、三井住友アセットマネジメントやニッセイアセットマネジメントが本格的に参入し、さらに低コストのインデックスファンドの提供を始めています。今後日本でも、インデックスファンドのコスト競争が起こる予感がしています。
ところが、銀行や対面型証券会社が抱えている、シニア層の資産運用は相変わらずの高コストです。販売手数料(購入時にかかる費用)が3%、信託報酬(年間にかかる管理料のような費用)が1.5%といった商品が、窓口で積極的に販売されています。購入した初年度は、2つのコストを合わせて4.5%ですから、5%で運用できてもマイナスになる計算です。このような高コストの金融商品を使って運用しても、資産は増えるどころか減ってしまいます。
世界基準で動いている一部の「賢明な投資家」以外の日本人の資産運用は、時代に逆行する高コストガラパゴス化が進んでいます。このままでは、シニア層の積み上げてきた資産が、金融機関の手数料に吸い取られていくことになってしまいます。
そんな流れに巻き込まれないためには、マネーリテラシーを身に着けるしかありません。6月に出版した「初めての人のために資産運用ガイド」(まもなく10万部!)では、金融機関の「カモ」にならないための方法を具体的に書いています。
ガラパゴス化が進むのは、携帯電話くらいにしてもらいたいものです。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。