日韓首脳会議の主たるテーマはやはり、慰安婦問題だったようです。予定時間を大幅に超過した前半の少人数会合ではその多くを慰安婦問題に費やした、とされます。様々な思いがあるこの問題について両首脳は今年中を目標にその解決策を決める方向で動くようです。
やや違和感があるのは本件について割と継続的に、そして詳細に報道し続けたのが日本経済新聞であります。11月3日には一面トップ記事としてそれを扱っています。また、日本側の提示案についても日経が数か月前にかなり詳細に報道していました。私もカナダでの慰安婦問題で様々な方とやり取りしている中で最新の情報元として皆様とシェアするには大いに役立ってきました。
さて、問題解決を促進させ、本年度中にどうにか、という目標設定はある意味、この問題に直面している者としてありがたい指針であります。
私は本件の取り扱いにつき、関係者には夏ごろから「日韓首脳会議が秋には開催される見込みでその際には慰安婦問題がその主題になるはずだからその結果を待ったうえで次の戦略を考えるべし」と主張し続けてきました。一部ではそれを待てないという声もあったのですが、抑えてきたのは世界各地に広がる慰安婦像問題を唯一解決できるのは政府間の大方針がまずはあってこそ、と判断しているからです。
よって、今回の日本側から考えられているいくつかの提案、例えばアジア女性基金のフォローアップおよび政府の財政的支援、首相や駐韓国日本大使のおわびや元慰安婦との面談は日本側が既に解決済みとする本件をその枠組みから大きく逸脱しない範囲で最大限の考慮を示していると言えます。なぜここまで譲歩するのか、という意見もあるようですが、日本だけが譲歩するのではなく、韓国側にも相当の譲歩や負担を強いるならばギリギリの妥協線ではないでしょうか?
どのあたりで落としどころが見いだせるのか、これは両国間の政治、経済問題などのバランス関係をも含めて調整が進むものと思われますが、朴大統領も自分の保身のためにも本年中の解決はどうしても達成したいところでしょう。また、山積する経済問題を解決するためには日本との関係改善は必須であります。
但し、最大の問題は政府レベルで解決するかもしれないその提案の内容が韓国の市民グループにどう受け入れられるか、これは全く別次元の問題である点を忘れてはいけません。思えば1965年の日韓基本条約で慰安婦問題を含め、戦時中の問題はすべて解決し、巨額の資金が日本から韓国に動きました。にもかかわらず、韓国側がその資金を元慰安婦を含め、国民に配分せず、経済振興とインフラ拡充に振り向けてしまったことで慰安婦問題がおざなりになってしまったことが挙げられます。
実は1965年当時は慰安婦問題そのものが存在しなかったわけで当時、韓国政府がさして重視していなかったことに一つ目の読み違いがありました。そして慰安婦問題が本格的に持ち上がったのは大分の主婦が朝日ジャーナルに意見広告を15回も打ち込んだ89年であって「日本発の案件」である点が第二の読み違いであります。その後の日本側のドタバタ、そして韓国側に火をつけたのは皆様、ご承知の通りであります。
よって、もともとの問題意識が政府レベルではなく、市民レベルであること、そして慰安婦像建立の動きは韓国中央政府の後押しというより、地方都市の首長が海外の同朋との関係に乗じて動いたり、あるいは中国側の反日組織と同調したりする一種の過激派的行動がある点には注意が必要かと思います。つまり、政府間の問題解決が必ずしも市民レベルまで納得させられる訳ではないのです。
特に過激派的思想組織の動きは制御が困難であります。よって両国間で本件が解決した暁には朴大統領が絶対的で強力なステートメントを述べてもらうことが極めて重要なメッセージになろうかと思います。日本側からはそのあたりの外交センスを強く押しだしてもらえればと思っています。
本年も残すところわずか2か月足らずですから非常に近いうちに何らかの動きがあるだろうことを期待しております。
では、今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月4日付より