米9月個人消費と所得、iPhone6S効果みられず --- 安田 佐和子

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米9月個人消費支出は前月比0.1%増となり、市場予想の0.2%増を下回った。前月の0.4%増にも届かず。7ヵ月間で6回目の増加を示した。消費の内訳は、以下の通り。

・耐久財 0.85%増、前月の0.27%増を上回り5ヵ月連続で増加
・非耐久財 1.19%減、前月の0.05%減に続き2ヵ月連続で減少
・サービス 0.44%増、前月の0.50%増を含みプラス基調を維持

耐久財は新車販売台数に支えられたほか、サービスが堅調な水準をたどる。半面、非耐久財はガソリン価格の下落が痛手となった。

米9月個人所得は前月比0.1%増となり、こちらも市場予想の0.2%増に届かなかった。前月の0.3%増を下回りつつ、9ヵ月連続で増加。可処分所得は0.1%増と、前月の0.4%増を下回った。貯蓄率は所得と支出が並んだものの4.8%と、7-8月の4.7%から上昇し、5ヵ月ぶりの高水準を示す。

所得の内訳は、以下の通り。

・賃金・所得 ±0%、前月の0.5%増を下回り増加基調を8ヵ月でストッ
(民間が0.1%減と増加基調を5ヵ月で止め、特にエネルギー関連を含む財生産業が0.6%減と著しく製造業もドル高の余波を受け0.6%減。反対にサービスは横ばい、政府は0.3%増)
・不動産収入 0.4%増、前月の±0%から増加にマイナス反転(農場が4.0%増と6ヵ月連続でプラス、非農場は0.2%増と前月の0.1%減から反転)
・家賃収入 0.4%増、前月の0.3%増を上回り19ヵ月連続で増加
・資産収入 0.4%増、前月は±0%(配当は0.5%増と2ヵ月連続で増加、金利収入も0.1%増と6ヵ月連続で増加)
・社会福祉 0.1%減、前月の0.4%増を下回り3ヵ月ぶりに減少(メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.3%増と4ヵ月連続で増加、メディケア=高所得者向け医療保険は0.4%増と少なくとも7ヵ月連続で増加)
・社会補助 0.2%増、前月の0.3%増を下回りつつ少なくとも10ヵ月連続で増加

米9月個人消費支出(PCE)デフレーターは、前月比0.1%低下し市場予想と一致した。前月の±0%から弱含んだ。前年比も0.2%の上昇と、市場予想に並んだ。8月の0.3%から、小幅に鈍化している。コアPCEデフレーターは5ヵ月連続で前月比0.1%の上昇を示しつつ、市場予想の0.2%に及ばず。前年比は8月に並び、1.3%の上昇にとどまった。PCEデフレーターとコアPCEともに、米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」からかい離した水準を維持。「2%」割れは、そろって2012年5月以来となる。

▽米7-9月期雇用コスト指数、消費の伸びしろの狭さを露呈

米7-9月期雇用コスト指数・確報値は前期比0.6%の上昇となり、市場予想と一致した。前期の0.2%から加速したとはいえ、1ー3月期には届かず。前年比では2.0%増内訳をみると、賃金・給与は0.6%増と前期の0.2%増を超えた。2008年4-6月期以来で最高を遂げた1-3月期の0.7%増には、至っていない。代わりに福利厚生は0.5%増と、前期の0.1%増から加速した。

雇用コスト指数は前年同期比2.0%増となり、1ー3月期の2.6%増から減速した。ホリデー商戦が近づくなか、消費ののりしろは思ったより大きくない可能性を残す。

——以上の結果をみると、消費は引き続き新車販売にテコ入れされた様子が伺えます。意外だったことに、米9月小売売上高と同じく2014年当時と異なりiPhone 6S効果が現れませんでした。所得の伸び悩みもあって、財布の紐が緩まなかったのでしょう。あるいは自動車という高額商品のお買い上げで他への裁量支出が回らなかったとも考えられる。米10-12月期GDPが力強い伸びを達成するのは、困難なムードが漂います。

(カバー写真:Takuhito Fujita/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年11月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。