ネットで人生棒に振りかけた私がネット投票をプチ展望

どうも新田です。すみません、初めての拙著の発売が近づき、売れるか売れないか、その重圧に怯えながらタイトルにさりげなく売れ線のトラップを潜り込ませているこの頃です。佐々木俊尚に煽られて「これからはネットの時代だ」と新聞社を辞めたはいいものの、ネット選挙で痛い目に会ってきた私だからこそ、ネット投票について体験的に少し語らせてもらいます。というのも、まあ先日、アゴラで山田肇先生が報告されていた勉強会に私も実は参加しておりました。記事では触れておりませんが、私が想定していたよりも意外に早くネット投票が実現するシナリオもチラホラと見え始めているとのことで、あさちゃんならずとも、びっくりポンです。

※自宅のパソコンや出先のスマホで投票できる時代は意外に早い !?
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マイナンバーで実現に下地 まずは自民党総裁選から


まあ、言うまでもなく、ネット投票を成立させるには、その有権者の身元確認をきちんとしておかねばならないわけですが、日本では長らく、運転免許証以外に手軽に持ち運べる公的身分証が稀有だったため実現はほぼ不可能でした。しかし、ようやくマイナンバー制度が始まることになり、国民ID導入実現ということで、ネット選挙を導入した場合の有権者の身元を確認するための最低限の下地は整いつつあります。もちろんマイナンバーは現状、税と社会保障が利用目的なわけですが、2018年には利用範囲の拡大を含めた法律の見直しに含みを残しており、セキュリティ面の課題はさておき、今後の選挙制度改正の議論の行方によっては“ありえはなくはない”ところまで来ているようです。

とはいえ、まず新しいことを実現していくには「小さきから始めて大きく育てる」というのが現実的な切り込み方。ここから先は講演を聞いての私見ですが、最初は公選法の対象ではない選挙で開始。といっても、それなりに政治的効力は必要なので公党のリーダーを決める選挙、それも野党よりは事実上の“首相選挙”である2018年の次回の自民党総裁選で党員によるネット投票を実施する。ここで政治家と国民の理解を得たら、次はガチの選挙に入り、まずは衆院選ではなく政権交代のないモルモット参院選、それも在外投票に限って開始。外国からの遠隔投票によるコストを抑える方便になるので理解も得やすい。

ネット企業で働く人のスピード感からは恐ろしく鈍臭いわけですが、それはしょうがない。あきらめろ、政治なんてそんなもんだ。しかし、19年参院選の在外で成功すれば、次は地方選だ。そういや2022年には、国政選のシミュレーションとして格好なことに次の次の都知事選があります。舛添さんが3期狙うのか、そろそろ僕ら世代のリーダーが名乗りを上げるのか先のことは分かりませんが、ここで1,000万規模の選挙で成功させることができれば、いよいよ次は参院選の完全実施→衆院選で導入→2025年頃にはネット投票オール実施 !?、という流れが見えてくるかもしれません。

そういや、維新の党が代表選でネット投票を予定していましたが、ご存知の通り、お家騒動に突入したので結局パー。実現していれば自民総裁選に先んじ、10年後のネット投票へとつながる先駆者の称号を得られたはずですが、残念ですね。

「投票の秘密」が意外な壁に !?


あと、勉強会で発見があったのは次の話。国政選挙でのネット投票と言えば、皆さんエストニアを先例として思い浮かべると思います。エストニアのネット投票では、選挙期間中であれば、自分が一度投票した候補者を変更することもできます。まさにネット投票ならでは。このシステムのいいところは、たとえば特定の団体が構成員の有権者に対し、「Aさんに入れろ」とオルグして衆人環視する中で特定の候補者に投票させるようなことが投票所以外の投票で懸念されるわけですが(おときた都議のブログご参照)、有権者が帰宅したあと、トイレに隠れてスマホをこそこそ取り出し、「やっぱり私はBさんがいい」と翻意することが可能な点です。

ところが日本で仮に技術上、ネット投票を導入できるようになったとしても、今度は法的なハードルが存在します。それは憲法で定める「投票の秘密」。本来はまさに有権者の投票への干渉を排除するため、誰が何に投票したのか分からないようにしているわけですが、エストニア方式で差し替え可能にするとなると、その有権者が誰に最初は登録していたかの情報を一時的に選管に預ける形になるわけです。サーバーに仮置きして、選管職員が原則それを覗けないようにしたとしても、解釈の仕方によっては投票の秘密に抵触する可能性もなきにしもあらず。このあたり、憲法学説的に若手のセンセあたりで、どなたか検証されているんでしょうか。

仮に投票の秘密的にビミョ~ということになれば、憲法制定時に想定していなかった新たな課題浮上とも言えるわけで、憲法改正に向けた新しい切り口提起にもなり得ます。もっとも、第9条で「陸海空軍その他の戦力を認めない」としながら世界第9位の軍事費規模の自衛隊を持つ、ほかにも内閣法制局がテキトーに解釈して穏便に世の中を治めてきた我が国独特のリーガルマインドでは、ネット投票ごときの話題で、名人芸のような解釈を編み出して正当化できちゃう気もするわけですが、要は結局、あとは国民と政治家のやる気次第と言えそうです。以上、寒風吹きすさぶ出張先の東北からでし…あ、最後に。

いよいよ拙著の見本が刷りあがりました!
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これはマジ話ですが、出版社の営業担当によると、アマゾンからの予約発注の状況は、過去にお付き合いしてきた著名人ではない新人著者の平均の約20倍だそうです。これも帯に堀江さんと乙武さんの強力ツートップにコメントをいただけたことも追い風になっていると思います。お二人に改めて感謝。よろしくお願いします!ではでは。


新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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