民泊が許可になる?!

岡本 裕明

今日の日経の一面記事には驚きました。「民泊、許可制で全国解禁、政府来春にもルール、訪日客急増に対応」とあります。このブログで先日、二日に渡り民泊について記載したばかりですが、かなりインパクトがあるニュースですのでこの内容に絞って影響などを考えてみたいと思います。

まず、今までの民泊については戦略特区で要件を満たしたところだけが許可される方向でした。その先鞭をつけていたのが東京の大田区で年内にもそのプロセスを終え年明けから解禁と認識しています。ところが、この記事の内容が正しければ来年4月には特区ではない日本どこでも一定条件をクリアすれば民泊が許可されることになります。

記事からはいくつかのポイントが見て取れます。

許認可の枠としてはホテル、旅館、簡易宿所、下宿というカテゴリーに民泊が加わり、部屋数の制限はなさそうです。次いで部屋の大きさは簡易宿所の客室の延べ床面積が合計33㎡であるものを緩和する方向とあります。この表現は二か所、注目する必要があります。一つは延床面積がどことどこが含まれるのか、であります。33㎡とは20畳ですが、個室に限らず、風呂やトイレ、それ以外にリビングやダイニングがどのように扱われるか次第でこの条件を満たせるかどうかというところだと思います。

ちなみに葛飾区の条例からは簡易宿所の決め事が一客室の構造部分の床面積はわずか3㎡(1.8畳)しか要求されていませんし、記事からは簡易宿所のルールをさらに緩和する方向となっておりますので例えば2LDKの部屋の一室を貸すことも可能にならないとは言えないでしょう。

二点目はこれは許可制度ですから多分、市町村、ないし区の保健所などが管轄する案件になりそうです。都心部やその周辺ではその許可の申請が膨大となり、行政がパンクすることになるでしょう。よって、すぐに許可になるかどうかは別問題となりそうです。

三つ目に最低宿泊期間ですが、大田区の様に7日とするとそのアドバンテージはほとんど消えてしまいますのでそこまで許可するなら1泊からOKにすべきな気がします。一方で集合住宅では管理組合との軋轢が出来そうです。また、一番気をつけなくてはいけないのは賃貸している人が「また貸し」する形の民泊をさせないよう当該不動産の所有者にのみ、その許可を与えるよう管理すべきでしょう。

マーケティング見地からするとairbnbのライバルの出現は必至の情勢です。よってそれぞれの評判や口コミが今後の成長を左右していきます。また、実際に貸す側からするとリピーターを確保するなどの工夫が必要でしょうし、受け入れ側としての「おもてなし」競争がさく裂することが想定されます。特に利益水準度外視の格安の部屋が市場に出てくることも大いに想定され、「安かれ、悪かれ」でイメージを悪くさせなければよいかと思います。

個人的には「田舎」「畳」といった経験型の民泊は面白いと思いますが、時期はハイシーズンに集中し、一年を通した客が期待できる市場はやはり都市圏と観光地が主体になろうかと思います。よって、この緩和がすぐに小遣い稼ぎになるかどうかは別です。

それと何度も言うようですが、このビジネスはリネンなどのクリーニングや清掃、場合によりお茶などの「おもてなし」、更には鍵のなどの扱い、洗濯機や乾燥機の使用を含め、実に多岐な方面の気遣いが必要です。(海外では洗濯物を外に干さないため、乾燥機が必須だと思うのですが、日本の乾燥機は2-3時間かかり機能的に非常に劣ります。)

また、お客様は日本のやり方や常識が分かっている方ではなく、言葉も通じず、トラブルに巻き込まれて困る方々も多いことになろうかと思います。

お客様には子供連れで走ったり声を上げたりして近所からの苦情も出ることがあるでしょう。ゴミ捨てでトラブルになるケースも聞いています。私も海外でレンタカーの仕事をしていて、返却される車はまともな場合からゴミだらけのものまでさまざまで、さすが、海外と思ってしまいます。つまり、何があってもびっくりしない耐性が必要でしょう。

案外ふたを開けれ見れば民泊を受け入れるところは限定されるとみています。許可の問題より自分の家に他人を入れるのは日本人は得意ではありません。正にそういうビジネスに特化された方中心に展開していくことになろうかと思います。そして数年後には一旦、その実情に合わせて許認可条件の見直しもあるだろうことは覚悟しておいた方がよさそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月22日付より