勝負のステージを上げよ!

岡本 裕明

私の知り合いに「非常に成功した」方があちらこちらにいらっしゃるのですが、その成功者にも二通りあり、一回の成功で満足して息を抜いてしまうタイプと継続してチャレンジをするタイプの方がいらっしゃいます。どちらが良いとは実は一言では言えません。なぜなら次のステージにチャレンジしたら前回の成功分を全部失くしてしまった方もいらっしゃるからです。しかし、勝負のステージは「上に上がってなんぼの世界」で洋の東西を問わないと思います。

野球選手やサッカー選手が欧米のチームに参加するのはなぜでしょうか?国内リーグで一定の評価や達成が出来た時、もっと挑戦したいという気持ちがあるからでしょう。その点、国際派の選手がなかなか育たなかったのがゴルフだと思います。ゴルフブームは80年代半ばから顕著になりました。その間、ゴルフの賞金がどんどん上がり、国内選手はその獲得賞金の大きさで称賛され話題になりました。その中でも特に有名だったジャンボ尾崎は国内では連戦連勝でしたが海外ではダメでした。実力の問題はともかく、彼は身内でやっていた不動産事業が傾き、その借金返済に尾崎氏の賞金が担保の様になっていたためとされます。こんな話はスポーツだけに限らず芸能界でもよく聞く話で「歌い続けないと借金が返済できない」某演歌歌手もいました。素養があるのに別の理由でステージを変えられないのです。

では、一般の方が起業するのはどうでしょうか?サラリーマンが独立して起業できない最大の理由は「毎月貰う決まった金額のお給与」があるからです。特にご結婚された方が急に独立などというと奥様から罵声を浴びせられるのがオチでしょう。女性は安定感とブランドが大好きですから今の会社の名刺や肩書を失くして独立してどこの馬の骨か分からなくなるよりずっと幸せなのでしょう。

編集長が代わってすっかり内容が変わった日経ビジネス。(東芝への徹底追及の姿勢は週刊文春なみの迫力があると思います。)その記事でへぇ、と思わせたのが「(イーロン)マスクが認めた若き改革者」というものです。マスクとは電気自動車のテスラの創業者ですが、そのマスク氏が新入りで弱冠26歳の日系アメリカ人、上田北斗君を新工場のローンチマネージャーに指名し、4か月でそれを完成させるよう指示したというのです。新入り故の怖いもの知らずで様々なハードルを乗り越えて達成したという美談です。彼はその功績で同社の工場の立ち上げを次々任され「マスクの右腕」となるそうですが、在任5年の今年、惜しまれて退職します。

理由はもっとやりたいことが出来たから、というものでドライブモードというベンチャーを仲間と立ち上げ、テスラ以上のインパクトあるものをやると意気込んでいるそうです。この小説の題材にもなりそうな若者はテスラの創業者から圧倒的信頼を得、社内でも一目置かれる存在であったのでしょう。しかし、それに甘えることなく、自分の次のステージを目指し、パシッとその気持ちの切り替えができたのが素晴らしいことだと思います。

挑戦は誰でも出来るのですが、その一歩が踏み出せない理由は組織の中に埋没してしまうからでしょう。特に「ダメ」のレッテルを貼られると浮き上がるどころか逆に追い出されてしまいます。人は迎合しやすく、一旦ある部分に注目すると他の部分が見えなくり、一方的な評価を下しやすくなります。ですが、人間、どんな人も必ず特技や人より秀でた何かを持っています。そこを見出し、磨きをかければ逆境の人生に光が差すことも大いにあり得ます。

日本がなぜ、最近競合に負けるのか、という話がありますが、私はハングリーさの欠如なのだろうと思います。多くの新興国の人たちは本当に夢のようなことに真剣に取り組んでいます。そのパッションは中途半端に成熟した日本ではもはやなかなか見られないかもしれません。こんなことではダメだと思う日本人がもっと増え、挑戦する意気込みを見せないと人生、つまらないと思います。「波乱万丈」って本当に聞かなくなった言葉の一つのような気がします。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月30日付より