経営者ですが、2ヶ月の育休を2度取ったことのある、36歳2児の父です。
「イクメン」という言葉を仕掛けた、厚労省イクメンプロジェクトの座長もやっています。
さて、宮崎衆議院議員が、お子さんの出産の際に1ヶ月の育休を取りたいと表明されました。
それに対し、谷垣自民党幹事長が「被雇用者とは違う」と仰っています。
(http://bit.ly/1ki82Cm)
民間でも、Newspics「おすすめのコメント」ではコンサルティング会社社長が
「育休を取って子供を育てたいなら、国家の戦略意思決定に関わる政治家である必要はないし、あってはならないのです。それに、選挙で選ばれているあなた方には、休まれても代わりの人がいなのですよ!」
ということで、宮崎議員の育休取得希望を批判しました。
また、ネット上でも
「国会議員カップルの「育休」をどう思う?」というアンケートが実施されていて、
「問題がある」が67%という状況でした。
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/21182/result
色々な意見があることを尊重しつつ、僕個人は「男性議員の育休取得には大賛成」と叫びたい。
なぜなら日本にとって良い影響があるからです。
まず、反対派の意見に反駁していきます。
【政治家は労働者ではない?】
政治家は労働者ではないので、育児介護休業法で育休を取る権利を付与されているわけではありません。よって、宮崎議員も欠席するだけなので、法的には育休を取るわけではなく、「育児をするために休む」だけです。
ちなみに、僕も経営者なので法的には育休を取っていませんが、ただ「職場に行かない」という形で、事実上の育休を取りました。サイボウズの青野社長もそうですね。法的にないからダメだ、と言ったら、世の中の経営者や政治家、自営業の人たちは、みんな「事実上の育休」は取れなくなります。
【休み中に給料をもらうのはずるい?】
給与をもらえるのはずるい、という件ですが、一般労働者の場合も、現在は保険を含めると事実上約8割の給与保証があります。これまで政府は、この育休中の給付金を引き上げる努力を続けてきました。
「休んでいるんだから給料払うな」という人は、ではこれまでの政策方針を否定するのでしょうか?
だとしたら全ての育休者に同じセリフを言うべきでは。
【政治家は代わりがいない?】
もし国会議員が一人休んで、政治が回らないとしたら、そっちの方が驚きです。
私たちはどうして「政党」や「議会制民主主義」という方式を採用しているんでしょうか。
突出した一人の専門人材がいなくても、集団としてそこそこの意思決定ができるためでしょう。
何を言っているのか理解できません。
【政治家はフレキシブルだから、育休取らなくてもやっていける?】
元民主党議員の井戸まさえさんは「議会活動は毎日あるわけではない。政治家が大変なのは地元活動の方で、そちらを後援者や関係者に事情を話して休めばいいだけの話だ」と仰っていて、「議会は休まなくても良いでしょ」と言っています。( http://blogos.com/article/151487/ )
ただ、「政治家が大変なのは議会じゃなく、地元活動」と言っている時点で、どうかと思います。政治家の本分は議会活動なのであって、地元でモチついたりすることじゃないんですよ。
反論については以上ですが、今度は彼が育休を取るメリットを紹介しましょう。
【男性の育休取得を社会的にアピールできる】
日本男性の育児休業取得率はたった2.3%。一般社団法人日本能率協会が公表している2012年度新入社員「会社や社会に対する意識調査」結果によると、育休を希望する男性は33.9%に上っているにもかかわらず。
こうした状況を変えられる、願ってもない機会でしょう。
【最も分かっていない人たちの目を覚ます】
政治の世界は、高齢男性の世界です。国会議員の女性比率は9.5%。OECD諸国ではダントツのビリです。それもあり、子育てについての理解度は非常に低い。
だから、子どもへの公的支出は高齢者の11分の1になるわ、保育士を学校の先生に代替させようとか、大臣レベルでも言っちゃうわ( http://bit.ly/1NiUphZ )、三世代同居させれば良い、とかトンデモ政策が優先順位高くなっちゃうんですね。
そう、子育てについて知らないし、知ろうともしていない。もっと言うならば、子育てを舐めてる。
こうした酷い政治家社会の中で、子育てを体感し、理解する議員を増やすのは、現役有権者にとっては非常に重要なことです。
でないと、「高齢者に3万配ろうぜ、ガハハ」な政治家ばっかりが当選していって、その片隅で「ティッシュに味があるんだよ」と言う貧困状態にいる子どもたちが放置されることになるのです。
まとめましょう。
男性の国会議員が育休を取ることは素晴らしいことです。
できるなら、国会議員全員に育休を義務づけたいくらいです。
それはまちがいなく、子どもと子育てへの理解を深め、彼らのつくる「それじゃない」感満載の政策提起率を引き下げ、より子育て現場に近い政策へと繋がっていくでしょう。
というわけで、みんなで宮崎議員を応援だ!
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2015年12月24日の記事『男性政治家が育休取れない国に、あなた本当にしたいんですか?』を転載させていただきました(タイトルはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。