中野区の課題も知らない若者に国政の話はできない!? --- 選挙ドットコム

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(編集部より)選挙ドットコムの人気連載「小池みきの下から選挙入門」からの転載です。

政治と若者をつなぐ活動を行うNPO法人YouthCreateの代表、原田謙介氏へのインタビュー第三弾。学生団体ivoteの運営を行い、若者の政治参加を促す活動のニーズに気づいた原田氏は、大学卒業後にNPO法人YouthCreateを立ち上げ、現在に至るまで活躍を続けている86世代。対するは、政治について意識し始めたのがつい最近のことでしかない無知な同学年の小池である。原田氏の目に、ここ数年の政治動向はどう映っているのか聞いてみた。

【小池】
「YouthCreateを立ち上げて四年以上が経ってますよね。立ち上げた頃と今の社会を比べてどう思いますか」

【原田】
「大きな変化を感じてます。今年の夏から18歳選挙権も解禁になりますし。そういう変化を俺たちが作ったんだぜ、なんてことはもちろん言えないけど、その変化をよりポジティブなものに変えていくことには少し関与できたかなと」

【小池】
「18歳選挙権以外に、具体的にどんな変化があったと思いますか?」

【原田】
「ポジティブな変化と言えないのが残念ですが、とにかく投票率が低くなってますね(苦笑)。若者の投票率が低いのは昔からですけど、昔は『若者の投票率が相対的に低い』という状態だった。今は全世代的に低いんです」

【小池】
「うーむなるほど、平成21年(2009)の衆議院議員総選挙の投票率は69.28%。それが平成26年(2014)には52.66%まで下がってますね。世代別に見ると、20代の投票率が平成26年にはとうとう30%台前半に……3人に1人しか選挙に行かないってことですね」
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▲総務省サイトより

【原田】
「ただ、投票率は下がっていますけど、潜在的な関心自体が全然ないわけではないと思うんです。若者の投票率を上げなきゃ、という危機感を持っている人も多い。そんな中で、『若者 投票率向上』なんてキーワードでググれば、検索結果に僕の名前とかYouthCreateがひっかかるようにもなったし、まだまだやれることはあるのかなと」

【小池】
「今後はどんなことをやっていこうと思っているんですか?」

【原田】
「若い人に、国政ではなくむしろ地方の政治に関心を持ってもらうための取り組みをしています。例えば Voters Bar っていうイベントがあって。地方のいろんな場所で、地域の議員と若者を集めた飲み会を開催するという内容で、要はivoteの時の『居酒屋ivote』の発展形ですね。これまで既に20回以上開催していて、僕らの活動の一つの柱になっています。これは今後も、全国でやっていこうと」

【小池】
「へええ、国政から地方政治へ興味が移ったのは、やっぱりivoteでの活動の影響なんですか」

【原田】
「そうですね。居酒屋ivoteでよくわかったんですが、本当に政治に興味のない若い人が、国会議員といきなり国政の話をするのはちょっと難しいんですよ。重要なことを話しているのはわかっても、いきなり『オレ、TPPについてはこう思います!』なんて意見とか言えないじゃないですか。自分の考えがちゃんと言える状況を作れないと、ただ議員の話を聞いて終わり、じゃ意味がないから」

【小池】
「あ、そうか、そこで地域の政治という方に目を向ければ、政治に興味がない人でもちょっと話題が身近になりますよね。街の課題とか、自分が感じている不満とか」

【原田】
「そうなんです。政治というとどうしても『国の政治』に意識が行きがちなんですけど、県や市町村の中で政治家をしている人もいる。日本のどこでも政治は動いている、目の前で政治は行われているんだ、ってことをちゃんと伝えていきたいですね。マスコミも選挙っていうと国政のことしか言わないじゃないですか。そして皆、地元の選挙で誰が出ているかも知らない。中野区に住んでいるのに、中野区でどんな議論がされているか知る機会がないんです。そういう部分を少しでも変えていけたらいいなと」

【小池】
「そのために必要なのが政治家とそれ以外の人たちの直接のコミュニケーションだから、飲み会を開催している」

【原田】
「はい。『ああこのおじさんが政治に関わっているんだ』と思ってもらうところから始めてもらうんです」

【小池】
「すごい、地道だ……! って言うとなんだか偉そうですね」

【原田】
「いや、一過性のでかい変化っていうのはあんまり意味がないと思ってるんで僕。何かしたからって、次の選挙で若者の選挙率が急激に上がっても逆に怖いですもん。若者の投票率は確かに低いし、選挙の基本的な考え方は多数決だけど、民主主義における多数決というのはあくまで『合意の取り方の一つ』なんです。ただ手を上げさせるだけではなくて、皆で話し合って一つの合意を作っていくという過程も含まれているし、そこには誰もが加われる。そういう実感をもっと持ってもらうことを今は優先しています」

【小池】
「うむむ、政治に加われるという実感ですか」

【原田】
「こういうの、政治的有効性感覚(Political Efficacy)っていうんですけど……簡単に言えば、『自分の行動は政治に影響を与えることができる』という個人の感覚、信念のことです。自分の望みの政策が通ったりすればもちろんその感覚は強まりますけど、意見がたとえ通らなくても、『ちゃんと最後まで話を聞いてもらえた』とか、『深く議論をすることができた』という経験があればそれは広い意味での有効感覚につながりますよね」

【小池】
「確かに、こちらの意見を言う前に門前払いされた時と、最後まで聞いてもらった上で理論的に否定された時では、絶対に残る感覚が違うでしょうね。なんとなく政治に対しては、『門前払いされてる』感を抱いてしまっているかも」

【原田】
「政治に、若者の意見が必ずしも“反映”される必要ってないんですよ。だって正しい意見だとは限らないですから。でも、政治について議論する場に、若者の声が乗らないのは絶対におかしい。そこを変えていくには、少しずつでも双方を同じ場に引っ張り出すしかないというのが僕の考えで。まだ僕らの力では限界がありますけど、地方で政治家と若者をつなげる取り組みには、これからもずっと挑戦していくつもりです。Voters Barは今でもいろんな地域の学生や若者から『うちでもやりたい』って連絡吐きますし、ニーズはあるんです。こういうイベントが、自治体それぞれに単発じゃなくて仕組みとして根付いていくのが最終的な理想ですね」

【小池】
「うーむ、やっぱり地道だ。でも、これを全国でやってたら確実に若者の投票率には影響出ますよね。これを読んでいる全国の皆さん、ご検討よろしくお願い致します!」

◯Voters Barについての詳細・開催依頼はこちらから
http://youth-create.jp/action/voters-bar/


小池みき:ライター・漫画家
1987年生まれ。郷土史本編集、金融会社勤めなどを経てフリー。書籍制作を中心に、文筆とマンガの両方で活動中。手がけた書籍に『百合のリアル』(牧村朝子著)、『萌えを立体に!』(ミカタン著)など。著書としては、エッセイコミック『同居人の美少女がレズビアンだった件。』がある。名前の通りのラーメン好き